稼ぎどき
私はタクシードライバーとして都会で働いている。
タクシードライバーには隔日勤務と言って、朝から翌日の早朝まで勤務する、ちょっと特殊な勤務形態がある。多くのタクシードライバーがこの勤務形態を選択していて、私もコレで働いている。やればやっただけ稼げる上、たっぷり休みを取れるからだ。
深夜、終電の時間を過ぎたあたりは、言ってみればタクシードライバーの稼ぎどきでもある。私も自分の営業エリアの駅周辺を流し、終電を逃して駅周辺をうろつくサラリーマンや大学生を探す。
ほとんどの人が仕事から解放されて家路を急ぐ人たちだ。
中には、家にいるより会社にいるほうが落ち着くので、あまり家路を急がない人もいるけど。
また、私たちタクシードライバー同様、多くの人が仕事から解放された時間こそ、主な稼ぎどきになる職業もある。バー、クラブなどの水商売の人たちだ。
引きどき
そんなこんなの人生模様が繰り広げられつつ、西の空に明けの明星が輝くころ、一つの光が宇宙へ飛んで行く。
不夜城の繁華街にも夜明けが訪れる。
夜明け近くになると、さすがにタクシーを利用しようという人も少なくなる。今度は、水商売で働く人たちが家路を急ぐ。
空が白々としてくると、私の勤務もそろそろ終わりだ。営業所に戻り、もろもろの作業を片付ける。
そして、今日も無事に勤務を終えたことに感謝する。口には出さないが、心の中で感謝の言葉を言ってみる。
ドライバーは常に交通事故のリスクに直面している。しかし、今日も事故に遭うことを避けることができた。やはりこれに一番に感謝しなければいけない。
それに、今日もそれなりに稼ぐことができた。これを積み重ねていけば、何とか息子を無事に大学まで行かせることができる。いや、その前にまず結婚相手を見つけることが先か。大学うんぬんは妻子がいてこその話。
とにかく、これにも感謝だ。