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タクシー運転手 体験談

電話の恐怖

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いつでもつながる

携帯電話は僕の子どものころからあり、今は生活に絶対不可欠なアイテムだ。
しかし、親の世代の若いころは、今ほどには普及していなかったという。携帯無しの生活なんて全く想像できない。まるで原始時代と同じではないか。
携帯電話の良いところは、いつでもどこでも誰かとつながるところだ。孤独を感じることがない。
なんてお気楽なことを考えていたのは、学生時代までだった。
会社に就職して営業企画部に配属されると、上司、先輩、取引先と、ひっきりなしに仕事の電話がかかる、LINEが届く、メールが来るようになった。
加えて、もちろんプライベートの友人知人からもLINEやら何やらで連絡が来る。ハブられるのは怖いので、こまめにチェックする。
正直、疲れる。携帯のなかった時代がうらやましくさえ思えてきた。

世代間の絆

そんな人疲れからか、ついに体を壊し、僕は仕事を辞めてしばらく休養することになった。
やがて体調が戻り、仕事へのカムバックを考えたが、もう電話に悩まされるのはゴメンだった。
そんな僕に、父が勧めてくれたのがタクシー運転手だ。実は父の父、つまり僕の祖父が生前タクシー運転手をしていて、父には忘れられないことがあったという。
今もそうだが、昔もタクシー運転手の仕事を「底辺職」だと揶揄する人がいた。父が若かったころ、祖父とちょっと口論になり、思わずタクシー運転手の仕事をけなす発言をしてしまったことがあるそうだ。
その後、父と祖父はその話題に触れることはなく、普通に接していったが、そのときの祖父の悲しそうな顔が父の胸に重く残ることになった。
父は言った。タクシー運転手の仕事は人々の生活を便利にする、とても尊い仕事だ。覚悟と責任感がなくては務まらない、と。

ダイヤルって

こうして僕はタクシー運転手となった。
父の言う通り、確かに責任の重い仕事だけに、充実感も大きい。それに何より、仕事中に営業所から無線で連絡が来ることはあっても、いきなり誰かから携帯で呼び出されることはほぼなくなった。
また、今はタクシー業界は人手不足、高齢化が進み、同僚の多くは50代以上だ。携帯電話を持っていても、まだまだスマホじゃなかったりする人も少なくない。
そんなスマホ依存とは無縁の人たちと接していると、携帯無しの生活もできるような気がしてこなくもない。
携帯電話がなかったころへのかすかな憧れとでも言うのだろうか。
たまにテレビなんかでダイヤル式の電話を見ると、あのダイヤルを無性に回してみたくなる。

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