どこか似ているデザイナーとドライバーの仕事
自分もそうだけど、トラックドライバーってなぜか立場の弱いところに追い込まれがちなような気がする。実は、友人でフリーのデザイナーやってるやつがいるんだけど、彼も同じようなことを言ってた。話してみると、それはどうも、それぞれ基本的に1人の仕事で、持ってるものが人にはないものだからじゃないか、という結論めいたものに行き着いた。
デザイナーの彼はデザインという特殊技能とDTPの特殊なアプリケーションソフトで仕事をする。プロドライバーの自分はまあまあの運転技能と体力と持ちトラで仕事する。2人とも仕事の依頼のされ方でよくあるケースは「この内容とこの価格でできる?」(定価がなく、相場もあってないようなもの)。ここで「それではできない」と言ってしまうと「じゃ、ほかで頼むからいいや」となるから厳しいギリギリの条件でも受ける(これが悲劇の始まり)。
デザインの仕事では、受けたはいいけど締め切りが厳しくて、しかも1人しかいないから徹夜してでもやることになるそうだ。トラックドライバーの自分もやはり、ほかに仕事をとられたくないから、と言うか、最近は、こんな厳しい条件で誰かが受けちゃったら気の毒だから自分にのところでストップしようという気持ちもあって、引き受ける。
「お客サマはカミサマ」という思想の理不尽さ
でも、デザイナーもドライバーも実際に仕事をしていくと、いかに無茶苦茶な厳しい仕事か分かっていくので「ああこれはワリに合わないな」と思うようになる。そんな仕事に限って、何件かで断られて来ているという場合がしばしば。
こんな時、ちょっと納期を延ばしてもらえまいかと言うと、態度は一変。「引き受けた以上はやってもらわんと」と高圧的。ムリを承知で依頼してきてるから、なおさら一歩も引けないという図式。そういう態度で来られても、悲しいかな「お客サマはカミサマ」と教わってきたからどうしても強く言えない。
でも、労働と対価の交換のはずなのに、どうして依頼側と引き受ける側でこれほど上下関係ができるんだ?と理不尽に思う。でもムリムリで依頼してくる側も、そのまた上にお客さんがいたりするから、これはいわば食物連鎖なのだ。友人のデザイナーも自分も食べていかなくちゃならんから、悲しい食物連鎖と分かっていてもやっちゃうんだけどね。
こういうの、今、話題になってる「働き方改革」でどういう扱いになるんだろうか? 持ってるものが普通の人では替われないものという特殊性が認められるのか? その持ち物でしか勝負できないことと、最終的に仕事をするのは1人という弱みを突かれて、ますます厳しい条件になるのか? なんだかんだ言っても「お客サマは神サマ」思想が根強くある限りは、理不尽なパワハラあり、恫喝スレスレの駆け引きありなような気がする。
プレカリアートユニオンがトラックドライバー救済も
そんな中、ある時、ドライバー仲間がいいことを教えてくれた。自分みたいに働く者の権利を守ろう労働組合があるという。普通、労働組合と言うと、社内の何人かでまとまって成立するものと思われがちだが、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど雇用形態問わず、1人でも入れる労働組合なのだそう。それはプレカリアートユニオン(http://www.precariat-union.or.jp/)という組織。ブラック企業やパワハラと戦って勝利した実績もかなりあるらしい。しばしば無茶な契約で事故の責任をかぶせられるようなトラックドライバーを救済するノウハウもあるというから頼もしい。