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タクシー運転手 体験談

いつかどこかへ

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何か起こりそう

思いがけないことが起こるのが人生というもの。
俺も自分がタクシー運転手になるとは思っていなかった。きっかけは3年前の夏だ。
俺は当時、ドラッグストアでバイトをしていた。高校卒業後、一度はメーカーに就職したが、人間関係にストレスを抱えて退職し、バイトしながら何となく毎日を過ごしていた。
そんなある日、高校時代の先輩がバイト先に訪ねてきた。俺は店の裏手でジュースの箱を整理しながら、熱心に同窓会に誘う先輩の話に耳を傾けていた。
数日前から、俺は不思議な予感に心を奪われていた。
それまで出会ったこともない、素敵な何かがやってくるという予感だ。
先輩にそれを話すと「同窓会に来れば、その何かに会えるかもよ」という。そのひと言に、俺は同窓会に行くことを決めた。

真理(仮名)

そこで俺には確かに出会いがあった。真理(仮名)という、学年は1つ下だった女性だ。広い同窓会会場で俺たちは運命的に目が合い、一瞬で惹かれ合うものを感じた。
真理(仮名)を含め、男女数人で他愛のない話をした。お互いの仕事の話になった。
航空機関連の仕事でチーフになっているヤツ、食品加工会社で課長補佐をしているヤツと、それなりな役職に就いているヤツもいた。
しがないバイトの身の俺は、少々居心地の悪さを感じた。
そんな中、真理(仮名)は「タクシーの運転手をしている」と話した。真理(仮名)はシングルマザーで、幼い子どもを育てながら働いていた。
そんなタクシー運転手を「底辺職」だというヤツがいる。俺は頭に血が上った。

ひとつの心

同窓会の後、俺は真理(仮名)と連絡を取り合うようになった。
さらに俺はバイトを辞め、タクシー会社に就職し、二種免許も取得してタクシー運転手になった。真理(仮名)の人生を理解したかったし、タクシー運転手を「底辺職」だというヤツらを見返したかった。
俺と真理(仮名)はどんどん親しくなり、2人の手を1つに重ね、心を1つに重ね、永遠の愛を誓った。
だが、実際にタクシー運転手を偏見で見ている人が何と多いことか。
俺は考える。いつか、そんな偏見が消える日が来るはずだ。それとも、偏見のない、世界のどこかへ、真理(仮名)と子どもを連れて旅立とうと夢想する。

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