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トラックドライバー 体験談

嘆息

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深夜のメリット

ここのところ、トラック運転手はため息をつくことが多い。
人手不足、コロナ禍、価格競争による収入の落ち込み、それらが合わさっての多忙。それでも人々が生活し、経済が回るために、我々トラック運転手は働き続ける。
そんなトラック運転手が、一番恐れるのは交通事故だ。そのため、安全運転に神経を集中させる。
そしてトラック運転手にとって厄介な存在が渋滞だ。渋滞を経験したほとんどの運転手が同じ思いを抱くだろうが、イライラする。できれば渋滞は避けたい。
だから、長距離の仕事をしているトラック運転手はわざわざ深夜にトラックを走らせたりする。深夜は交通量も少なく、滅多に渋滞にならないので、イライラすることもない。夜遅くに荷を積んで出発し、夜通し走り、明け方近くに目的地に着き、仮眠を取って目的地の門が開くのを待つわけだ。

消えた車

俺も長距離の仕事をしていたときは、よく深夜にトラックを走らせた。
あれはもう20年も前の話だから、俺はまだ20代だった。その夜も俺は、たくさんの荷を積んだトラックを運転して北に向かっていた。何しろ深夜だから渋滞の心配がない。だから、広い国道をまっすぐ走っていた。俺みたいなトラック運転手は他にもいるから、周囲にもトラックはたくさんいた。しかし、渋滞するほど多くはなかった。
しかし、深夜2時を過ぎたころだったか、急に周囲の車がいなくなった。本当に、気がつくと消えていた感じだった。
まあ、そんなこともあるだろうと、俺は深く考えず、そのままトラックを走らせた。対向車も全く見えなかったので、よく考えると不自然だし、不気味なんだけど、当時の俺は気にしなかった。

誰かの気配

そのうち、周囲が霧に包まれ始めた。いくらそれまで周囲に車がなかったからと言って、視界が悪いと危ない。俺は少し減速した、その瞬間、目の前に渋滞が現れた。俺はビックリした。
ただ、その直前に減速していたので、そこで急ブレーキをかけることもなかった。渋滞とは言え、前方の車たちはゆっくりだが走り続けていたので、俺もその列の後ろにトラックをつけ、ノロノロ運転をすることになった。
さっきまで車が全くなかっただけに、何だかものすごい違和感を覚えた。
「ヤレヤレ、せっかく深夜に走っているのに渋滞か」と心の中で思った瞬間、隣の助手席のあたりから「ハア…」ため息が聞こえた、気がした。俺以外に誰もいないはずの車内で、誰か人の気配がしたので、俺は全身の毛穴から汗が吹き出すのを感じた。いや、毛穴から汗が出るわけじゃないんだけど。
それで気が動転した俺は、トラックを路肩に寄せ、そこで停めた。心の中で「落ち着け」と自分に言い聞かせ、目を閉じた。それから、ゆっくり目を開けたら、渋滞は消えていた。霧もなかった。再びトラックを走らせると、数台のトラックが行き交う、日常の風景が戻っていた。

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