残り香
タクシー車内のクリーンな環境の保持に気を使うのがタクシー運転手の務めです。
勤務日やその前日には、おちおちギョーザも食べられません。私は吸わないですが、タバコ好きのタクシー運転手も大変です。とにかく、車内をできるだけ無臭にしておく必要があります。
タクシー運転手自身の食事や習慣だけではありません。お客さんが残していく臭いにも気をつけます。
今は禁煙を掲げるタクシーが多く、私が運転するタクシーもそうなんですが、ヘビースモーカーの人は体に臭いが染みついているのか、車内で吸わなくても、降りた後にかすかにタバコの臭いがします。
もちろん、気付けば私は臭いを消すようにします。ときには、気付かずに後から乗ったお客さんが少し眉をひそめることがあります。
ギョーザの口臭がきついお客さんも乗ってきます。これまた、後が大変です。
不思議な話
先日は、どう見てもお上品そうな老婦人2人が乗った後、焼肉の臭いが残っていたことがありました。時間は午後3時過ぎです。まさか老婦人が2人でそんな時間帯に焼肉を食べるとは考えにくく、なかなかな謎でした。
真相は今も分かっていません。
焼肉の臭いも食べ物の臭いには違いなく、後から乗るお客さんは必ず不快になります。たとえ焼肉好きな人が乗っても、たぶん眉間にシワが寄るでしょう。
私は懸命に臭いを消しました。
食べ物屋さん、たとえばうなぎ屋さんに近づいてうなぎのかば焼きの臭いが漂ってくると食欲が湧き出てくるのに「これ、他人が食べた後じゃね」と思うと、なぜか不快感が出てくるんですよね。不思議。