過酷な労働
30代だった私がタクシードライバーになりたいと言うと、多くの人が「やめておけ」と言いました。
「タクシードライバーは拘束時間が長くてしんどい」とか「収入を上げるのは難しい」とか「出世もなく、社会的地位が低い」とか言います。
私はそれまで雑誌編集の仕事をしていたのですが、紙媒体が売れない時代なので、それこそ収入も低く、それなのに徹夜も当たり前の過酷な労働の日々でした。
確かにタクシードライバーも拘束時間は長いです。でも、前職もそうでしたし、そもそも大企業のサラリーマンだって残業ゼロじゃないでしょう。自宅に仕事を持ち帰ってる人もいるでしょうし、首都圏なら通勤時間が往復4時間なんて人も珍しくないはず。
高収入の実現は確かに難しいです。これまた、タクシードライバーに限ったことではありませんよね。医者は高収入ですけど、仕事の大変さ、過酷さも並みではありません。
基本的人権
タクシードライバーは社会的地位が低いようです。私には、実際は分かりません。私自身、誰かをその職業によって「地位が低い」と思ったことはないですから。基本的には人は平等なはずでしょう。私はそう教えられて育ちましたし、実際にそう思っています。たとえ、他人に対してやたらと威張ってくるような、礼儀知らずな人がいても「程度の低い人」だなんて思わないようにしています。
タクシードライバーになってみると、同僚やタクシードライバー仲間にはいろいろな人がいることに、大きな発見がありました。
子育てと両立しながら働いているママさんドライバーもいます。ゆくゆくは起業するため、人脈を広げ、貯金するために頑張る若者もいます。私がタクシードライバーになりたてのころ、いろいろアドバイスしてくれたベテランもいました。タクシードライバーこそ社会に貢献できる立派な仕事だと、熱く語ってくれた人もいます。
タクシードライバーに出世はありませんが、「出世」というものに自分の人生をかけるほどの価値があるとは、私には思えません。