誇り高き仕事
僕はタクシー運転手の仕事をしています。人に喜んでもらえる仕事ですし、そう簡単に誰にでも務まる仕事ではありませんし、僕は誇りを持ってこの仕事を続けています。
実際、お乗せしたお客様がタクシーを降りるときに「ありがとう」なんて言ってくれることもあり、そんなときは僕もとてもうれしいです。あの「ありがとう」は何度言われても、全く「もういらない」と思うことがなく、その度にいつもうれしいです。自分でも不思議です。
そんな単純なことで舞い上がるなんて、僕という人間は、よほど普段は誰かにいじめられているのかと、自分で自分を疑っちゃうほどですが、決してそんなことはなく、普段はごく普通に過ごしています。
それなのに「ありがとう」のひと言で何ともうれしい気持ちになります。
ハズイ
とは言え、タクシー運転手の僕は毎日スマートにお客様を乗せ、「ありがとう」と言われてニンマリする生活を送っているわけではありません。
ときには、と言うか、しょっちゅうヘマもしています。
タクシーを利用してくれるお客様を探して街を流していて、少し前方に手を挙げる女性の姿を見つけて颯爽とその女性の前にタクシーを停めると、女性は僕のタクシーを無視してその前に停まったスポーツカーの助手席に乗り込んでいく、なんてことも珍しくありません。
要するに、彼氏か友達か分かりませんが、知り合いと待ち合わせをしていて、その車が来たので手を挙げて合図しただけだったのですね。
何だか僕はとんだ勘違い野郎です。お恥ずかしい。