僕の場合
僕の父はトラック運転手に憧れていたらしい。
昔見たアメリカ映画で、大陸を悠々と行き交うトラック運転手の姿を見て以来、憧れるようになったのだとか。
ただ、そのとき、父はすでに社会に出て仕事をしていて、それはそれで本人もやりがいを感じていたので、転職することはなかった。当時は、今ほど転職を「気軽」に考えられる時代ではなかったそうだ。
だが、自分にトラック運転手への憧れがあったため、結婚して子どもができると、その憧れを子どもに押し付けてくるようになった。
そんなわけで「男ならロマンを持て。トラック運転手はロマンのある仕事だぞ」とうるさく言う。「男のロマン」って、何だかイメージだけで言っているような気がする。
ちなみに僕には妹がいて、父は妹にもトラック運転手への憧れを植え付けようとした。
私の場合
私の父はトラック運転手に憧れていたらしい。
私は、アメリカ映画でトラック運転手を見て憧れを抱いた人の息子の妹。つまり、私も父からトラック運転手への憧れを押し付けられて育った。
「女ならロマンを持て。トラック運転手はロマンのある仕事だぞ」が父の言い草。もう何が何やらだ。
普通なら、それだけ押し付けられれば反抗心が芽生えるものだが、兄も私も幼いころからそのトラック運転手が活躍するアメリカ映画やら、他のトラック運転手の映画、ドラマを浴びるように見せられたので、思春期を迎えるころには、トラック運転手への憧れではなく、親近感が芽生えてしまっていた。
とは言え、私も兄もトラック運転手にはならなかった。
その代わり、結婚して最近、私に子どもができると、再び父の目が輝き始めた。孫をトラック運転手にしようと、企んでいるかもしれない。