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トラックドライバー 体験談

オキナサイ

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戦い

トラック運転手は戦っている。そして、僕がいつも戦っているのは睡魔、またの名を眠気ともいう。
睡魔と戦う武器は眠気覚ましのドリンクやタブレット、カフェイン、うるさい音楽、大声などだ。
それで一瞬、覚醒しても、やがて、再び睡魔が忍び寄り、僕の耳元で「オヤスミナサイ」とささやく。
最悪、それで意識が飛ぶ。下手なホラー映画より恐ろしい瞬間だ。
こうなってくると、どんな武器も役には立たない。白旗上げるしかない。万事休す、降伏だ。
というわけで、睡魔に襲われると僕はトラックを停められるところに停め、仮眠を取る。
僕はいつも、なるべく早めに降参を悟る。だから「意識が飛ぶ」という最悪なケースは免れている。幸運なことに。

耳元の声

その日も、僕は昼ご飯に食べたカツ丼大盛りのせいなのか、午後の昼下がり、トラックを運転していながら睡魔の前兆を感じ始めていた。
カツ丼がうま過ぎた。卵でとじてあるのに、それでも衣のサクサク感が残り、厚さがあるのに柔らかくジューシィな肉のうまみを引き立てるよう、抜群のあんばいで揚げてあるカツの芳醇な味わいに、僕は早々と降参の白旗を上げるしかなかった。まさに僕はカツ丼という幸福を噛みしめた。しかも大盛りだ。
そんな至福のときを過ごした僕にとって、腹の皮が張り、目の皮がたるんでくるのも、もはや運命だったのだ。
やがて睡魔が忍び寄り、僕の耳元で「オヤスミナサイ」とささやく‥。
だが次の瞬間、僕の耳元でハッキリと「オキナサイ」という声が聞こえた。

1人きりの運転席

それで僕は運転席でハッとして、眠気が吹っ飛んだ。驚いて、全身の血が逆流して汗がドッと噴き出した。
僕はまずは落ち着いて、それから周囲をサッと見渡した。もちろん誰もいない
その後は睡魔に襲われることもなく、無事にその日の仕事をやり終えた。
後で思い返してみると、あのときの声は耳元で聞こえた気がしたが、同時に少し上のほうから聞こえたような気もした。聞き覚えのある声じゃなかったが、どこか懐かしさも感じられる声で、同時に感情のこもらない声だったように思う。
ただ、走っていたのは峠道だったので、あのまま寝落ちしていたらタダでは済まなかっただろう。

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