トラックに揺られ
トラック運転手の仕事は「1人が基本」です。
長距離トラックの仕事となると、その長い勤務時間の間、ほぼ1人きりです。寂しいと言えば寂しいです。
ですから、俺みたいに人見知りの人間にはうってつけです。
荷の届け先を目指して、ただ1人、果てなき道を、寂しさしか知らない男がトラックに揺られて走って行く、それがトラック運転手なわけです。
しかし、人見知りでも長い間1人きりだと、人恋しくもなります。人見知りでも孤独はイヤなんです。人間ってのは面倒くさいものです。
そんなときは「我が友は流れる雲と川のせせらぎさ」だとか、ロマンチックにかっこつけ、北風と並んでトラックを飛ばしていきます。
霧の中から
人里離れた野原の真ん中を走っているときは、余計に寂しいです。
たまに、1時間くらい対向車もなく、もちろん追いついてくる後続車も、前を走る車に追いつくこともなく、全く人の存在を感じないときもあります。大げさな話、人類が滅亡して1人だけ残されたような気分にもなります。
核戦争を恐れ、自宅の地下に核シェルターを準備している金持ちもいるそうですが、俺なら1人だけ生き残るなんてまっぴらごめんです。
寂しい野原の1本道を走り続け、道路を覆う濃い霧なんかが出てきたら最悪です。恐怖すら感じます。
霧の中から対向車が急に現れると、驚きのショックとともに、ホッと安心も感じます。