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トラックドライバー 体験談

どこにも行けない道

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いつもの場所で一服

あれはもう20年も前のことだ。
俺はトラック運転手になってまだ1年ほどの若造だった。当時の俺の仕事は、県境の山を越えて積み荷を物流倉庫まで運ぶことだった。
ほぼ毎日、同じ道を通る。まだ経験は浅かったが、1年も同じルートを走っていれば、目隠ししてでも通れるくらい、道を把握するくらいにはなっていた。
ただ、俺はまだ若かったこともあって、ちょっとでも時間に余裕があれば、サボることばかり考えていた。今なら、ちょっとでも仕事を早く終わらせるために、効率的に仕事を進めることを考えるが、そのころは効率もあまり考えていなかった。
とにかく、俺が通る山には、目的地へのルートを外れて山の中腹にある展望広場に抜けるルートがあった。俺はなるべくそこに寄って、トラックから降りて一服するようにしていた。

見慣れた道

さて、その日も俺は寄り道しようと、展望広場に抜ける道を目指して右折した。時間は午後1時過ぎくらいだった。
ここを5~6分走ると、道を登り切ってちょっとした広場に出る。そこは見晴らしも良く、トラックを停められるスペースもあった。
しかし、その日は10分走っても20分走っても広場に出ない。「道を間違えたのかな」と一瞬思ったが、いつもの見慣れた景色だったので、道は間違えていないはずだった。ただ、その“見慣れた道”を何度も何度も走っているとしか思えなかった。
ふと時計を見ると、9時ごろだった。そんなバカなはずはない、1時過ぎにこの道に入ったので、1時30分より少し前くらいのはずだ。
と思って視線をトラックの前方に移すと、いきなり広場が見えた。俺は広場からトラックが飛び出してしまわないように、慌てて減速した。時計を見ると午後1時27分だった。
あれ以来、あの不思議な体験は二度と起こらなかったよ。

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