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トラックドライバー 体験談

トラックドライバーの推理日誌

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相棒

その日はN県に運ぶ荷を乗せ、俺は夜の山道で1人寂しくトラックを走らせていた。
そう、日本のトラック運転手は1人寂しい仕事なんだよな。確か「ダーティファイター」とかいう映画の主人公はトラック運転手で、オランウータンを乗せて大陸を走ってたよな。うらやましい。
普段でも寂しい長距離トラックの仕事が、夜の山道となるとなお寂しい。
俺はそんなときにはいつも、自分のトラックに話しかける。「相棒、今日のエンジン音はいつにもまして良いね。山道でちょっと辛いかもしれんけど、この調子でもうひと踏ん張り頼むよ」ってな感じ。
そんな俺たち(俺とトラック)の前に、異様な光景が見えてきた。
10人くらいの黒服の男たちが夜の山道を徒歩で歩いているのだ。「徒歩で歩く」は変か。「朝食を食事する」みたいだ。
歩道もない道路だったこともあり、俺はトラックを減速した。登り道で、荷を積んでいるトラックの速度はかなりゆっくりになり、その黒服たちをじっくり観察できた。

メン・イン・ブラック

黒服はビジネススーツで、ネクタイもしっかり締めていた。靴も革靴だ。夜の7時くらいだったと思うが、少なくとも登山のピクニックではなさそうだった。
10数人はいただろうか。日本人かどうかは分からないが、アジア人であることは確か。お互いにほとんど話もせず、黙々と歩いていた、ように見えた。
俺はゆっくりその一団を追い越した。そしてバックミラー越しにその姿を追っていったのだが、何と1人1人闇の中に消えていくではないか。
俺は、荷を積んでいるのでゆっくり丁寧にトラックを停め、息を整えた。「相棒、ありゃ一体全体何なんだ? あいつら幽霊なのか? それとも地球人に化けた宇宙人? いやいや、地球人が宇宙人に誘拐されるところを目撃したのか?」と1人で大騒ぎ。
トラックのドアを開けて後方を確かめた。全員の姿が消えていた。
「待てよ。超常現象のわけがない。あいつらギャングか何かで、この山の中で秘密の取り引きでもあるに違いない」と妄想が止まらない俺。

解決編

「アホ、ギャングが徒歩で歩いて来るかよ」と、トラックのおかしな文法のツッコミも妄想で聞こえてきた。
俺はゆっくりとトラックを後退させ、男たちが消えたあたりまで引き返してみた。すると、そこから横に細い脇道が伸び、しかも目立たない看板が立っていた。看板には「郷土料理ジビエの店」と書かれている。
どうやら彼らは韓国のビジネスマンで、商用での日本旅行の途中であり、観光バスを利用してジビエの店に来たが、道が細くてバスでは入れないので、少し下の路肩が広い場所でバスを降り、歩いてきたらしかった。後から聞いたんだけどね。
俺にとってはちょっとしたサスペンスだったが、これがドラマなら怪しい事件に巻きまれる発端だったんだろうな。くわばら、くわばら。

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