勇気ある戦い
私はトラガール、つまり女性トラック運転手として仕事をしています。トラガールになって2年です。
とはいえ、大型トラックで長距離を走るのではなく、中型トラックでルート配送をしています。運転免許を取得したのが2007年以前で、中型も運転できたので、中型に乗らせてもらいました。
トラック運転手の仕事に就いたのは、人間関係にわずらわされずに気ままに働ける仕事だし、私自身車の運転が好きだし、勤務シフトに選択の幅があったし、給与システムに男女差がなかったからです。でも、当時は周囲にも反対されました。
それでも自分の意志を通しました。結果、ドライバー専門の求人サイトを利用したので、自分に合った会社とも出会えました。また、私は知らない地域に行くより、毎日同じルートを回るほうが性に合っていたので、最終的にこの会社に決めました。
女性ドライバーを積極的に採用している会社だったので、同僚に女性もいました。研修期間の先輩の横乗りのときも、女性ドライバーの助手として仕事を覚えました。
あなたはだぁれ?
配送先のコンビニの店員さんとも打ち解け、気軽にあいさつもできるようになったころのことです。
私はN町のとあるコンビニにお弁当を配送していました。毎日行っている仕事です。その日は火曜日だったので、美大生のSくんがバイトに入っていました。
Sくんはいつものように、私が店の前にトラックを停めると店からわざわざ出てきて荷下ろしを手伝ってくれました。荷下ろしを手伝ってくれる店員さんは多いのですが、トラックを停めるとすぐに来てくれるのはSくんくらいです。
さて、次の日、同じくらいの時間に同じコンビニに向かいました。コンビニのすぐそばまで来ると、いつも私がトラックを停める場所に、すでにトラックが停まっているのが見えました。しかも、私のトラックと同じ型です。ほかのドライバーとかち合うことなんてなかったので、不思議に思っていると、店からSくんが出てきました。そして運転席から降りてきたドライバーと話していたのですが、そのドライバーはなんと私そっくりだったのです。
ダーク・ゾーン
私そっくりのドライバーのトラックと、私の間には車が2台ほどいて、少し離れていたのですが、あれは確かに私でした。
やがてそのトラックは荷下ろしを終わり、店から離れていきました。それで私が店の前でトラックを停め、荷下ろしを始めたのですが、この日はシフトではなかったのでSくんもいませんでした。
翌週の火曜日、Sくんに確かめましたが、私がSくんを目撃した水曜日のその時間、Sくんは大学にいたそうです。
あの日、私が目撃した光景が何だったのか、説明できません。何か見てはいけない世界、踏み込んではいけない世界を垣間見たような気持ちです。ちなみに私には霊感もなく、UFOを目撃したとかの経験もありません。