サイバーパンクなタクシー
NTTドコモが開発した「AIタクシー」の利用が今年2018年7月21日から始まっている。
AIタクシーというのは、特定のエリアにどのくらいの人がいるかを集約した人口統計データをもとに、タクシー運航データ、気象データ、周辺施設データなどを組み合わせて分析し、タクシーの需要を予測するシステム。
あるテレビ番組の企画で、AIタクシーを新人ドライバーに持たせ、経験豊富な中堅ドライバーにはこのAIタクシーなしに勤務させ、乗客を乗せた回数、売り上げなどを比較したそうだ。
AIタクシーを使うと、何時にどこへ行けば、タクシーに乗りたがっている人が多くいるのかが分かるという。タクシードライバーにとっては、乗客を乗せていない時間を減らすことができ、また利用者にとってはタクシーを捕まえやすくなる。そんな、ほめるとこまみれのシステムだ。
データVS経験
ただ、乗客がどこに行きたいのかまでは予想できない。つまり、タクシードライバーとしては、それが遠方までの「高額運賃」のお客様なのかどうかは、乗せて目的地を聞くまでは分からない。
さて、AIタクシーを使った新人ドライバーと、AIタクシーを使わなかった中堅ドライバーで、その差はどうなったか。結果は、乗客を乗せた回数は新人が中堅を上回ったものの、売り上げは同じくらいだったとか。
どういうことかと言うと、中堅ドライバーのほうが「遠方」の乗客が多く、回数は少なかったが、売り上げは良かったということ。中堅は長年の経験で、「遠方」への乗客を見極める術を身に着けていたのだ。
負けて勝った
とはいえ、これは人間がAIに勝ったという話ではない。むしろ、経験浅い新人が中堅の仕事に肉薄した例だ。
タクシードライバーの仕事は「やればやるだけ稼げる仕事」ではあるものの、高収入を上げるにはそれなりの経験も必要だとも言われてきた。だが、AIタクシーがあれば、仕事を始めたばかりで経験の浅いドライバーでも、中堅並みの高収入が夢ではない。
長年、人手不足と言われてきたタクシー業界だが、その一因となっていたのが「すぐに稼げるようになれるか」という不安だった。それが解消されるので、今後はタクシードライバーも「高収入でしっかり休みが取れる仕事」と、堂々と言い張ることができる。
いよいよタクシードライバーが人気職種となるに違いない。