タクシーのマネジメントの基本は要は時間の管理
私は、ある商社の企画・マネージャーという仕事をしていました。この仕事は詳しく説明するのはややこしいのでざっくり言うと、いろんな作業項目のそれぞれに価格を設定し、それにかかるコストをいかに合理化していくかに取り組むというものです。その会社を定年退職して、タクシー乗務員になって今5年目。
前職での経験をタクシーの仕事にも生かせることがあるので、僭越ながらお話ししたいと思います。
まず、普通に教わったタクシー業務をそのまましていたのではとうていダメだと最初に思いました。
道路では鉄道のようには時間どおりには動けない。でも、渋滞の状況とか信号のタイミングとか、季節・月・曜日・時間帯が、クルマの流れにどう影響するかが予測できれば、かなり正確に経路と時間が読めます。
私はどうしたかというと、スマホの経路検索で出てくる時間を基準に、実際に走ってみて、経路に関わる沿線のイベントや季節変動をこまめに、パソコンで自分なりに整理していき、その基準経路を中心に流すようにしました(スマホの表示時間は時間によってかなり幅があります)。目標は2つ。一定の安全速度で走ることができ、滞らないこと。
もうひとつは空車率の圧縮です。駅待ちで並ばなくてはいけない場合も、自分で決めた一定時間を過ぎたら列を抜けます。5年もこうしたデータを取るうちに、必ずある層のお客様(それも行き先と金額も予想できる)が捕まるというホットスポットが浮かびあがってくるものです。
生身の人間にとっての危機マネジメントが重要
もうひとつ、タクシーのマネジメントで重要なのは、モノでなく人を乗せているので、その乗客の状態によっての対応をどうマネジメントしていくかということ。少子高齢化の現代は以前より圧倒的にお年寄りの方を乗せる機会が増えています。自分自身の実感としてそうです。お年寄りがタクシーに乗る場合を考えると、自宅から病院に定期健診にという場合はほぼ大丈夫なのですが、気をつけたいのは、市中でピックアップする場合。
ふだんはちゃんと歩けるので公共交通機関を使うのに、歩いている途中で具合が悪くなったのでタクシーをという場合があるからです。
私はそんな時に備えて、クルマの中に電子式の血圧計と体温計をいつも積んでいます。それから、市中のどこを走っていてもそこからの最寄りの病院の場所、診療科目と営業時間が分かるようにリストを作ってあります。
乗車されてからの世間話にもノッて来ないお客さんの場合、血圧と体温だけ計らせてもらって、どちらかが平常値でなければ、よほど頑強に断られない限り、私は躊躇なく病院に直行します。
実際、これで感謝されたことが何度もあります。これは自分自身の健康マネジメントにも毎日使うんですけどね。
最近ではお年寄りだけでなく、仕事で毎日ムリを重ねているような若い人の例もありました。
あとは交通事故への対応ですが、自分は気をつけていても、事故の被害者になる場合もあります。大地震に遭遇することもあるかもしれません。まあ、自分は医者ではないので手当てはできないかもしれませんが、そんな場合に備えてレスキューキット一式も積んでいます。