机上での開発は現場での実体を知らない
ロボットやドローンが荷物の輸送で使われるという場面がいよいよ一般化しようとしている。というニュースをよく見聞きする。プロのトラックドライバーをもう長年やっている身として、じゃ、それらが運送業界の職場をどう脅かすのだろうとちょっと考えてみた。
現実的に、たぶんこんなことがあるだろうな、というシミュレーションではあるけれど、現場を知らない技術者連中には、そんなこと想定外だろうということがある。ロボットはたくさんのセンサーを使い、刻々変わる状況に対応するということだが、机上で想定しうること以外のことに遭遇したらどうなる?
たとえば、とんでもない気候の激変や自然災害。生身の人間と違ってロボットもドローンも、落雷とか雹(ひょう)とか洪水や地割れ、そんな時でもAIシステムは異常電流やショックで誤作動起こしたりしないだろうか。方向の座標データを失って、民家やトラックヤードに全速力で突っ込むなんてことはないだろうか。玉突き事故なんかでの退避行動なんて距離センサーだけではできるわけない。
ロボットなら仕方ないけど人間だったら怒られる
それから、なにより、いわゆる生鮮品の野菜とか、セリの価格に直接響く「追っかけ便」のように他社トラックと先を争って走るなんて場合なんて、AIはどういうプログラムで動くんだろう。他社追っかけ便を認識できたとして、競走となったら制限速度のリミットはどう読み込むんだろう。先陣争いレースなんてとうていムリだ。
ただ、技術の進歩はともかく、ロボットが明らかに違う点は、何かミスがあったり、たとえば、配送スケジュールに遅れたとしても、人間のドライバーみたいに怒られないところだろう。機械なら「遅いぞ!」とどやされることもない。事故を起こしても逮捕はされない。ふだんの業務でも、事故とまではいかなくとも、渋滞で納期遅れになった場合、同条件で運転しているのが人間かロボットかで顧客の反応がまるで違うのは想像に難くない。ロボットならあきらめがつくけど、人間だったらまず怒られる。
アシスタントロボ・マテハンロボが先でしょ
まあ、そんなヒューマンドライバーの負い目もありつつも、ロボットにゃどんなに逆立ちしたってできるわけない部分が人間側にはある。それは、運転中のほかの車へのマナーや気遣いや予想外・予定外の場面でのとっさの判断だ。
たとえば高速で事故や災害などに遭遇した場合の人命救助行動なんかはマネできまい。震災であったように、道路の分断で立ち往生する車の荷主と連絡を取って、積荷のパンを被災者に配るなんてことも不可能だろう。
そう考えると、トラックメーカーの技術者連中には完全ロボットなんかじゃなくて、ベテランドライバーを徹底的にサポートしてくれるようなアシスタント機能のほうにもっともっと知恵を絞って欲しいもんだ。
それと、行政なんかではドライバーの人手不足って言ってるけど、ドライバーのなり手がないというよりも、荷の積み下ろしに携わる要員になり手がないというのが実態だと思う。自分もクルマの運転よりも積み下ろし作業の方が体にはこたえる。そう考えると、マテハン機器のほうも開発を急いで欲しいところだ。