楽しい仕事
僕はトラック運転手として仕事をしています。
僕がトラック運転手になったのは、それが子どものころからの夢だったからです。ですから、大人になって夢を実現したわけで、僕は幸せ者だと思います。
トラックの運転は楽しく、その楽しいことをやってお金をもらえるので、そりゃもう他に言うことはありません。
確かにトラック運転手の仕事は拘束時間も長く、そして長い割りには政治家ほどの高給ももらえません。それでも僕にとっては、何事にも代えがたい魅力があります。
第一、トラック運転手になっていなかったら、嫁さんにも出会っていなかったはずなので、トラック運転手になれたのはまさに幸運だったと思えます。嫁さんは僕の務めた会社で事務をやっていて、職場結婚だったんですよ。
予知夢
結婚してしばらくして、僕はある夢をよく見るようになりました。小さな男の子と遊ぶ夢です。その男の子は、どことなく僕自身に似ている子でした。
同じころ、嫁さんの妊娠が判明しました。僕はそれで「ははあ、最近よく見る夢は予知夢というやつだな。つまり、生まれてくる僕らの子は男の子なんだ」と思い、嫁さんにもそう話しました。嫁さんは「ははは」と笑っていました。
何度目かのその夢の中で僕は男の子に「どんな仕事をしているの?」と聞かれたので「トラック運転手だよ。とても楽しい仕事だよ」と答えました。すると男の子は「ふうん、それなら僕もトラック運転手になる」と言いました。僕は何だかうれしく感じたのです。
おじさんの正体
夢の中でそんなやり取りをしている僕は、寝ながらニヤニヤしていたそうです。隣で寝ていた嫁さんの証言です。
それで気味が悪くなった嫁さんは、朝だったこともあって、僕がいつも起きる時間より少し早かったものの、僕を起こしました。
何だかうれしい夢を見ていた眠りから急に起こされた僕は、我に返ってあることを思い出しました。それは子どものころの思い出です。
3つか4つくらいのことだったと思います。よく遊んでくれたおじさんが「トラック運転手は楽しい仕事だ」と話してくれて、僕は子ども心に「僕もトラック運転手になる」と決めたのです。
あのおじさんは、僕自身だった、のか?
ちなみに、その後生まれた我が子は女の子でした。