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トラックドライバー 体験談

祖父とトラックと見知らぬ相棒と

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ねぎらいのコーヒー

僕の祖父は若いころにトラックドライバーをしていて、これはそんな祖父から聞いた、昔々の話
祖父は長距離トラックのドライバーだった。トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするが、祖父もそうだった。トラックのハンドルを握り、遠方までの長い距離を、祖父はラジオを聞きながら過ごした。
祖父が荷を下ろすのは1か所ではなく、契約している数か所の工場で荷を下ろすことになっていた。
そんな荷の下ろし場所では、長距離をやって来た祖父をねぎらうため、缶コーヒーなんかを手渡してくれる担当者もいたそうだ。

助手席の人

あるとき、そんな荷の下ろし場所の担当者が「いつもごくろうさま」と言って、缶コーヒーを2つ渡してくれた。祖父は「親切な人なんだなあ」くらいに思い、ありがたく缶コーヒー2本を受け取った。
その次の機会にも、やはり缶コーヒーを2本くれた。このときも「すんません。ありがとうございます」と礼を言って素直に2本受け取った。
だが、さすがにその次にそこに寄ったときも2本渡されたのには、何かおかしいと感じて「いやあ、ありがたいですけど、そんなにしょっちゅう2本もいただいていたら申し訳ない気がします」と、ていねいに断ろうとした。
するとその担当者は「でも、助手席の人は疲れているんじゃないですか?」と、いぶかしそうに尋ねてきたという。

冷たい汗が

トラックドライバーは基本的に1人で仕事をする。祖父もそうだった。「助手席の人」という言葉を聞いた途端、背中に冷たい汗がしたたるのを感じた祖父は、運転席のほうを振り返ることができず、全身を固くこわばらせ、うつむいたまま、担当者に愛想笑いを向けて運転席に乗り込み、トラックを走らせた。
「助手席の人?」という言葉を頭の中で反すうしながら、視線は前方を凝視したまま、トラックを走らせるしかなかった。
ここまで話し、「今の話、信じる?」と言い、いたずらっぽく祖父は微笑んだ。

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