僕の叔父さん
僕の叔父は短気で困る。何かあるとすぐに頭に血が昇り、手が出るのだ。
手が出ると言っても、暴力的に殴ったりするのとは少し違う。漫才のツッコミのように、軽くどついたり、引っぱたく。
僕の父親もしょっちゅう引っぱたかれているが、痛くてキツイという顔はせず、むしろ楽しそうにしている。とは言え、やはり「痛いことは痛い」そうだ。
父の兄弟は、父を入れて3人いて全員男で、会うとしょっちゅうそんな感じで騒いでいる。その場に僕がいて、叔父の頭に血が昇ってくると「まあまあ、カッカするのはよそうよ」と言うのが僕の役目。
そんな叔父はトラックドライバーの仕事をしている。あんな短気で、よく安全運転しながら仕事できるなと、感心する。
動乱の時代
感心したついでに、ある日僕は叔父に「そんなに短気で安全運転は大丈夫なの?」と聞いたことがある。
叔父は大笑いし、こんな話をしてくれた。
叔父は若いころは今よりさらに短気で、頭にカーッと血が昇ると思わず相手をブン殴ってしまうこともあったらしい。ただ、叔父が若いころ、つまりそれだけ昔の時代は、叔父が勤めていた会社には叔父と同じくらいか、もしかすると叔父以上に短気なドライバーがいっぱいいたので、ドライバーが集まるとケンカ騒ぎは珍しくなかったそうだ。
そんなときには決まって叔父が、他のドライバーに「カッカするのはよそうよ」となだめる役割だったんだとか。
その話が本当かウソかは分からないが、たとえトラックドライバーじゃなくても、いつでもどこでも、すぐにカッカしたって良いことなんかないので、皆さんもカッカするのはよそうよね。