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タクシー運転手 体験談

「昔は良かった」とは言わないが

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まだ若い

俺は50代のタクシー運転手。タクシー運転手は人手不足が深刻で、50代でも「まだ若いほう」と思われたりする。俺が勤める会社にも60代、70代の先輩がいるので、それもまあ仕方ない。
今は、ほとんどのお客さんがタクシー車内ではスマホをいじっている。2人連れのカップルらしき男女を乗せても、それぞれスマホをいじっている。
俺も一応、スマホくらい持っているが、そんなにスマホをいじって何をしているのか、不思議でしょうがない。俺にとってスマホなんて、実用的に誰かに連絡するときくらいしか用がないからだ。もちろん、誰かを待っている間、退屈しのぎにスマホをいじることはある。しかし、そんなのは本当によほど退屈なときだ。横に誰かがいれば、その人と話したほうがいい。話せる相手が横にいるのにスマホをいじってるなんてもったいない
もっと不思議なのが、お客さんを見つけようと街を流しているとき、歩きながらスマホをいじっている人が結構いるってことだ。くどいようだが、俺は退屈しているとスマホをいじったりする。しかし、歩いているときを「退屈」とは言わないだろ。

明日はきっと良い日

そんなわけで「まだ若いほう」の50代の俺でさえ、なかなか今の時代には気持ち的に「ついていけない」と思うことがある。いっそ、スマホどころか携帯電話もなかった昭和の昔のほうが、気が楽だった気もする。
昭和の昔はテレビがまだ娯楽の王道で、俺はいわゆるテレビっ子だった。今と違って放送禁止用語もバンバンあふれ、SNSの炎上もなかった。
とは言え、俺は「昔は良かった」なんて言わない。歳を取ると、昔体験した苦労をすっかり忘れ、思い出がかなり美化されて「昔は良かった」と言いたくなる人の気持ちも分からないではない。歳を取ると身体能力も衰え、いろいろ病気しがちになる。健康状態に何の不安もなかった昔に戻りたがる気持ちも理解はできる。
それでもやはり「昔は良かった」つまらん。できれば「今が一番。もしかしたら明日はもっと良い日」で生きたい。

懐かしい街

なんてことを思いながら、俺はその日もハンドルを握り、タクシーを走らせていた。時間は深夜2時ごろだっただろうか。走り慣れている道だったが、何だか景色にモヤがかかったようになり、俺の意識ももうろうとしてきた。
いかん、このままでは事故を起こしてしまう! 俺は自分にカツを入れ、目を見開いた。
すると、目の前に見えてきたのは、何だが見慣れない、それでいて懐かしいような景色だった。舗装されていたはずの道路は砂利道になり、立ち並んでいたビルが姿を消し、木造の平屋住宅が並んでいた。路上駐車の車も、昔の映画で見たような、クラシックな車ばかり。
どうやら俺は過去にタイムスリップしてしまったようだった。俺は仕方なく、スマホもパソコンもない、昭和の時代でしばらく過ごした。「昔は良かった」なんて言いたくないが、昔は気楽だったかもしれない。
そしてつい最近、またふとしたことで現代に戻って来た。
なんて妄想しながら、今日もお客さんを探しながら、街を流している。

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