何の手?
私はトラック運転手をしている。トラックドライバーとも言うが、昭和世代の私には素直に日本語で「運転手」といったほうがしっくりくる。
運転手。なぜ「運転」の「手」なのだろうか。確かにハンドルを握るのは「手」だが、アクセルやブレーキの操作には足も使う。そう思って「手」という字を調べると、「手」には「組織を人体に見立てたとき、組織のために働く人がちょうど手になる」のだという。それで「人手が足りない」などの言い回しができる。人手が足りないというのは労働力が足りないということだが、単に「人が足りない」と言うより、確かに「労働力が足りない」感が出る。労働力が足りないことを「手が足りない」なんて言うしね。
というわけで、我々トラック運転手はトラックを運転する「手」ということになる。
手尽くし
トラック運転手としてやりがいを手にするには、どんな仕事も手を抜かず、手積みや手下ろしの手作業もこなし、人が手を引くツライ仕事を手ぐすね引いて待ち、手をゆるめずに手を尽くす。
手が後ろに回るような違反行為には手を伸ばさず、手を組めるような相手とは手の内を見せ合う仲間になり、手の施しようがないと呼ぶ声あれば、手を差し伸べる。
同じ運転手でもすべてがもろ手を挙げて仲間になれるわけでもないが、手八丁口八丁のヤツには近づかず、手練手管の甘言で手招きしても、その手は食わぬの焼きハマグリ。
そのうち、手塩にかけて手取り足取り教えた後進も我が手を離れて1人立ち。それからは手を携えて運転手業界を盛り上げ、今じゃ引く手あまたのトラック運転手、だと来たもんだ。