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体験談

夢の中のラーメン

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前もって

映画やドラマには夢オチというのがある。最後の最後に「今までのことはすべて夢の中のお話でした」というラストを迎えるもののことだ。以前も俺は夢の中で絶品のラーメンを食べさせてくれる屋台の話をした。
前もって言っておくと、この話も夢オチだ。ただし、これは友人から聞いた話。
彼はそのとき、トラック運転手としてA県からM県まで工業製品の部品を運ぶトラックを運転していた。何でもその部品は、ナンチャラカンチャラいう磁場を発生させるもので、取り扱いには細心の注意が必要とされていた。噂では「工業製品の部品」というのはウソで、何やら兵器に利用されるものとも言われていたそうだ。
そんな荷なので、彼は余計に慎重でていねいな運転を心掛けていた。そんなんだから、あまりスピードも出せない。しかも、神経を使うからかいつの間にかお腹が減ってきた。
しかし、初めて通る道で、飲食店やコンビニの場所も分からない。とにかく、そのまま走り続けるしかなかった。

鉄と鉛と

やがて前方にほのかな光が見えてきた。彼は「もしかしたら飲食店かもしれない」と期待に胸を膨らませ、トラックを進めた。すると、期待通りにそこは飲食店だった。
店名はもはや覚えていないが中華屋らしかった。彼は店に入ると、大好物のラーメンを注文した。そこでようやく気持ちが落ち着いてきたという。
落ち着いて店内を見渡してみると、彼以外にお客は1人もいなかった。店は、60代と思える店主が1人で切り盛りしているようだった。
やがてラーメンが運ばれてきた。まずはスープをすする。ところが、これが何だか鉄の味がしたという。怪訝に思いつつも次に麺を口にした。これまた、ゴムを噛むような不快な食感がして、味も鉛みたいだった。
ここで彼は気がついた。まてよ、どうして鉛の味なんて分かるんだ? 鉛を食べたことなんてないのに。

謎の光

やがて彼の足元に白いモヤがかかってきたことに気付いた。しかもそのモヤは、店の外から流れてきている。彼が急いで店を飛び出してみると、そのモヤは今まで運転してきたトラックの荷台から流れ出ていた。さらに、何やら「ウオン、ウオン」と変な音がする。
思わず「なんじゃこりゃーっ!」と叫んだところで、彼は目を覚ました。
そう、あらかじめお伝えした通り、夢オチの話なので、彼は夢を見ていたわけだ。そもそも彼はトラック運転手ではなく、ラーメン店の店主をしている。夢は普通に、布団の中で見たものだ。
ただ、そんな夢を見たのには、彼なりに思い当たる理由があるのだとか。
まず、友人である俺がトラック運転手で、俺はしょっちゅう彼に仕事の話をしている。
それから、彼のラーメン店兼住居の裏には、以前は化学工場があった。しかし、時代の変化でその工場は廃業し、そのまま放置してある。裏に化学工場があった場所でラーメン店なんて、いささかどうかと思ったらしいが、廃業してもう随分経つし、隣接しているわけでもないし、そもそも家賃が安かったからそこに決めた。
ただ、最近、真夜中に、誰もいないはずのその廃工場の明かりが点いていたりするそうだ。

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