目抜き通りの難しさ
僕はタクシードライバーの仕事をしている。とは言え、まだ3年ほどしか経験がない。
新人時代のこともまだ鮮明に覚えている。やはり最初のころはお客さんを見つけるのに苦労した。
先輩からは夜の繁華街に行けば、終電を逃した人がたくさんいると教わったが、酔っ払いにからまれたら嫌だと思うと、なかなか行けない。
駅前のタクシー乗り場にも並んだ。しかし、同じようなタクシーが多く、時間を費やす割りには売り上げが伸びなかった。
かと言って、飲み屋帰りの人もいないくて、他のタクシーも集まっていない場所だと、そもそもタクシーに乗ろうとする人が少ないので、これまたさっぱり売り上げが伸びない。
それで、百貨店やファッション店、飲食店が並ぶ、いわゆる目抜き通りを流してみることにした。
すると、目抜き通りだけに買い物して荷物が増えた人がタクシーに乗りたがるってことが分かった。だが、交通量も多く、もちろんタクシーも多いので、ここでもなかなかお客さんを乗せられない。
狙ったわけじゃなく
交通量が多いので、たまたまタクシーに乗りたそうにしている歩行者を見つけても、交通の流れを邪魔せずにうまくタクシーを歩道に寄せ、その人の近くに停めるのが難しいのだ。乗せるために車線変更したときには、すでに他のタクシーがうまい場所に停めていることもある。さすがに慣れているドライバーは動きが早い。
とは言え、僕も全く売り上げがないわけじゃなかった。納得できるほどには稼げないだけで、そこそこは稼げてた。
それでタクシードライバーになって1か月して、今後のためにもそれまでの仕事を振り返り、反省すべきところは改め、うまくできたところはそこを伸ばしていこうと思った。
そうして思い出してみると、街を流していて見つけるお客さんは、背が高い男性が多かったように思えた。別に狙ったわけじゃないんだけど、やはり背が高い分、目立つから見つけやすかったのかもしれない。
それから毎月、月末には自分なりの1人反省会を開催。「背が高い男性」率が低くなるにつれ、売り上げも伸びていったっけ。