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バス運転手の思い出

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赤信号で

僕は路線バス運転手として仕事をしている。
子どものころから乗り物への興味が強く、中でもトラックやバスといった大型車が好きだった。
子どものころは街中でトラックやバスを見掛けると、注意深く、その姿を追ったものだ。中学生になっても乗り物好きは変わらず、しかもいろいろ細かく見るようになっていた。
そんな僕が、いつも思っていたのは、赤信号で停まった車が横断歩道をまたいでいるのを見たとき「あの運転手は運転が下手なのに違いない」ということだった。
だって、車が横断歩道の上にあったら、歩行者には邪魔だからね。自分が運転免許を取る前だったので、横断歩道に入る前に車を停めることができないほど、運転が下手だと思っていたわけだ。心の中でひそかに冷笑さえしていた。
さて、そんな少年時代をすっかり忘れて、大人になり、運転免許を取り、僕はバス運転手になった。
もちろん、赤信号で横断歩道の上にバスを停めてしまうこともあった。

下手くそ

ある日、いつものように僕はバスを走らせていた。交差点に入っていったとき、もうそろそろ赤信号に変わるかな、と思ったのだが、いや、何とか行けると思ってそのまま走らせた。だが、渡り切る前に赤信号になってしまい、僕は仕方なくバスを停めた。バスはぶざまにも、どっかりと横断歩道の上にあった。
歩行者が迷惑そうに僕のバスをよけて通るので、僕は心の中で「申し訳ありません」とつぶやいた。
そんな歩行者の1人と、たまたま目が合ってしまった。その歩行者は学生服を着た、中学生くらいの男の子だった。その子は自転車にまたがり、やはり僕のバスを大きく迂回して道路を渡らなければいけなかった。
僕は思わず、その子に向かって「申し訳ない」という仕草をして頭をペコリと下げた。
するとその子は声には出さなかったが、口を「下手くそ」と動かしてニコリと笑った。
何だか僕は、少年時代の僕に叱られたような気がした。嫌な気はしなかった。

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