臨時収入は期待せず
私はタクシー運転手をしています。
タクシー運転手の給与は歩合制であることが多く、私もそうです。お客さんをたくさん乗せたり、遠方へのお客さんを乗せたり、売り上げが多いほど収入も増えます。
加えて、チップをくれるお客さんもいます。欧米の映画などみたいに札を出して小銭を受け取らず「釣りは取っときな」なんて言う人もいます。乗車賃とは別に千円札を出して「取っといて」なんていう、粋な人もいます。
それほど頻繁にもらえるものでもありませんが、それだけにもらえたときは、たとえ少額でもうれしいものです。もらえるとしたら、そのお客さんが気持ちよくお酒を飲み、機嫌が良いときや、親切で育ちの良い、大金持ちの老婦人が乗ったときくらいかもしれません。
こういう臨時収入は当てにしていると、全く入ってきません。逆にチップのことなんて考えず、仕事に精進していると、もらえたりするものです。
私の同僚で、そんなタクシー運転手がいます。
敬意を払う
そのタクシー運転手は女性で、タクシー運転手としての経験は4年くらいだったと思います。
タクシー運転手になったのは「運転が好き」ということと、同じくらい「接客が好き」だったからだそうです。
接客が好きというか、とにかく「人に喜んでもらいたい」という気持ちが強い女性です。どんなお客さんにも敬意を払い、親切ていねいに接します。
タクシー運転手になる前はファミリーレストランのホールスタッフでした。しかし、チェーン店だったのでマニュアルがしっかりしていて、自分なりの接客ができなかったので転職を考えていたとき、もう１つの好きなことの「運転」と同時にでき、しかもタクシー車内という密室で、それも自分なりの濃い接客をできるタクシー運転手になろうと決意したのだとか。
そんな彼女は、チップをしょっちゅうもらっているそうです。もちろん、チップがもらえるかどうかは、タクシー運転手の頑張りもありますが、それでもお客さん次第です。つまり運次第です。
いつもお客さんがいかに快適に過ごせるかを考えて仕事している彼女には、その幸運が寄ってくるのかもしれません。