ドライバーのための転職情報コラム

KORAPITA(コラピタ)

トラックドライバー 体験談

黒い霧のトラック

更新日:

緊張

トラック運転手の朝は早い
誰もがってわけじゃないけど、僕は朝6時には家を出る。
ただ、そういう人って多いと思うけど、ギリギリまで寝ている。目覚まし時計のけたたましい音で起き、何とか着替え、寝ぼけまなこをこすりながら出勤する。ちなみに自家用車通勤だ。
会社に着いて、車両点検や点呼など、毎朝のルーティンワークをこなしがらしっかり目覚める。
仕事は中距離の配送で、毎日、ほぼ同じルートを使う。荷の積み下ろしで回るのも同じお得意先。
その日は冬の寒い朝で、僕は霧が立ち込める山道をトラックで走っていた。徐行運転にするほどの濃霧ではなかったが、それでも霧は霧なので、僕はなるべく慎重な運転を心掛けた。
だが、霧は徐々に濃さを増していった。この道は何度も通っているが、それまで体験したことのなかった濃霧になっていった。
僕はもちろん緊張した。通い慣れた道とは言え、ここまで先が見えないと、やはり危険だ。

恐怖

緊張はやがて不安を生み、それは恐怖へと変わっていった。
それで自然と徐行運転になった。ゆっくり過ぎて、今にも止まりそうなスピードだったかもしれない。
すると、後ろからグングン追い上げてくる車があった。この霧の中、その車はライトもつけず、普通の速度で黒い影となって僕のトラックに近づいてきた。
「やばい、このトラックが見えていないのか」とも思ったが、その黒い影は僕のトラックを追い越し、そのまま僕の先に突っ走っていった。
横切るときにチラッと見たが、僕と同じようなトラックだった。いや、同じようなではなく、同じトラックに見えた。おかしい。今日、このルートを走るトラックは、僕の会社では他にいないはずだ。
すると、前方を行ったはずのトラックのエンジン音が消えた。遠く離れていったなら、徐々に小さくなるはずだが、突然、ぷつんと消えたのだ。
僕はイヤな予感がして、後を追った。すると、明らかにトラックが道をそれ、崖下に落ちたと思わせる痕跡があった。
僕はトラックを停めて運転席から降り、崖下を見下ろした。しかし、霧が濃くてよく見えない。

自戒

もしものことを考えた僕は、携帯で助けを呼ぶことにした。しかし、圏外で通じない。
僕はどうしたものかと立ちすくむしかできなかった。
すると、どういうわけか霧が薄くなってきた。僕はもう一度、崖下を見下ろしてみた。しかし、やはり落ちたはずのトラックは見当たらない。それどころか、落ちたと思える痕跡さえもなくなっていた。
僕はでも見たのだろうか。それともこれが世に言うお化け? 心霊体験?
僕はその日1日「なんか腑に落ちない」という気持ちで過ごした。しかし、それから何日か経つうち、その「事故目撃」を自分への戒めだと思うようになった。
これまでも自分なりに安全運転を心掛け、慎重な運転で仕事してきたつもりだった。だが、どこかで「慣れ」からくる「油断」も生まれていたかもしれない。ここでもう一度初心に戻り、緊張感を持ってトラックを運転することを決心した。
その証として、朝はきちんと早起きするよう、生活習慣も改めることにした。
それから何年も経つが、僕は今も安全にトラックを運転している。
ちなみに、その日の目撃談は警察でも話したが、結局、事故はなかったようだ。

-トラックドライバー, 体験談
-,

Copyright© KORAPITA(コラピタ) , 2022 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.