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トラックドライバー 体験談

惑星より愛をこめて

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腕時計の謎

俺は長距離のトラック運転手をしている。
9年ほど前のこと、どんな仕事だったか詳細は忘れたが、俺は何も荷を乗せずに夜中の2時ごろ、山道を走らせていた。その道は昼間なら何度も通った道で、その気になれば「目をつむってでも走れる」くらいだった。
峠をいくつか越した後、右折して川を渡る道があった。ちなみに左折すると、さらに山奥に入って行ってしまうT字路だ。
その日も、もちろん右折する気満々だった。ところが、そのT字路にさしかかると、ヘッドライトに照らし出されてまっすぐ伸びている道が見えたのだ。
行き慣れているとはいえ、そんなにいつも通る道ではないので、前回来た後で新しく道路ができたのかなと思った。
実は右折すると、方角的には少し遠回りになり、真っすぐ行くと、その道がそのまま真っすぐ伸びているようなら、会社へは近道にもなるはずだった。
そのときは荷を積んでいなかったこともあり、俺は思わず「真っすぐ行ってみようかな」と思ってしまい、右折せずにその道に入っていった。
ふと腕時計を見ると、針がグルグル回ったように見えた。

永久欠番

しかし、道は徐々に細くなっていき、500メートルも行くと砂利道に変わってしまった。
しかも、そのうち集落に迷い込んでいった。そこは昭和のころのような古臭い住居が立ち並ぶ集落で、しかも明かりは全く点いていなかった。人の気配すら感じられなかった。
明かりが消えているのは真夜中だからとも思ったが、人の気配がなかったのは不気味だった。とは言え、住む人がいなくなって廃村になった感じでもなく、ついさっきまで人がいたのではないかと思わせる雰囲気もあった。つまり「朽ちた」感じではなかったのだ。
さすがに怖くなった俺は途中でUターンできそうな場所を見つけ、引き返し、前はT字路だったはずのところまで戻り、いつも通る道に入った。
こうして俺は会社に無事にたどり着いた。
それからしばらくして、俺はあの集落を昼間に見てみようと、休みの日にT字路だった場所に向かった。しかし、そこは再びT字路になっていて、真っすぐ進める抜け道なんてなかった。
俺は愕然とした。まるでどこか見知らぬ惑星にでも迷い込んだような、あの夜のできごとは何だったのだろう。
永久に忘れてしまいたい不気味なエピソードだ。

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