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タクシー運転手 体験談

モノクロの男

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よく出るスポット

俺みたいに長年タクシー運転手って仕事をしていると、好奇心からだろう、たまに人から「心霊体験ってある?」と聞かれる。テレビの心霊番組なんかでタクシー運転手が登場して、墓地の近くで不可思議な体験をしたとか何とか、よく語るからだろう。
タクシー運転手の仕事は深夜勤務も珍しくないので、世間では心霊体験の1つや2つくらいあっても不思議じゃないと思っているのかもしれない。
ただ、俺自身には、乗せたと思ったお客がいつの間にか消え、シートがびっしょり濡れていた、なんて体験はないし、同僚の運転手からも聞いたことはない。
聞いたことはないが、タクシー運転手仲間で有名な「よく出る」と噂されるスポットは知っている。幸い、俺の会社の営業エリアじゃないので、俺もそのあたりに行くことは滅多にないし、同僚も同様だ。
ただ、長いタクシー運転手人生で1度だけ、不思議な体験をした。

深夜に乗せた客

あれは冬の深夜2時過ぎだったと思う。かれこれ12~13年前だ。
俺は繁華街で終電を逃したサラリーマンを乗せた。週末だったので、そのお客は自分が住むマンションじゃなくて、郊外にある実家まで行くという。深夜料金で遠距離だ。俺は結構な売り上げになると思って、内心ほくそ笑んだ。
郊外の実家まで1時間半くらいかかっただろうか。それで時間は2時を過ぎるくらいになっていた。ここからまた町中に戻るわけだけど、もちろん、こんな郊外で深夜にタクシーを利用する人なんていやしない、と思った瞬間、周囲にはポツン、ポツンとしか住宅もないような田舎道で、俺のタクシーを停めようとする人が視界に入ってきた。
その人は手を挙げたわけじゃないのだが、その姿を見たら、なぜかタクシーを停めなきゃいけないという思いに駆られた。それでその人の前にタクシーを停め、後部座席のドアを開けると、果たしてその人はタクシーに乗ってきた。

あるはずのないもの

その人は30代か40代くらいだったろうか、厚手のジャンバーにジーンズをはいていたのが分かった。ただ、奇妙なことに、昔の白黒映画の人物のように、モノクロに見えた。つまり、色がついていると思われるところはすべて黒か灰色に見えたのだ。そして不気味なくらいに無表情だった。
俺は特に強い根拠があったわけではないが、この人は死んでいるのではないかと思った。
モノクロの男はボソッと行き先を告げた。そこは隣町の大きな市営住宅だった。俺は怖かったので、あまり後ろを気にしないようにしてその市営住宅までタクシーを走らせた。タクシーは何事もなく目的地に着き、モノクロの男はきちんと料金を払って降りて行った。
翌日、俺は昨夜のできごとを妻に話した。すると妻の顔はみるみる青ざめ「何言っているの。あそこの市営住宅は昨年、取り壊されたじゃない」と言う。
言われて思い出したが、確かにあそこは昨年、取り壊され、今はまだ更地のままのはずだった。

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