ドライバーのための転職情報コラム

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トラックドライバー 体験談

世にも冷や汗たらたらな配達

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奇怪な届け先

あれは5年前の初夏のことです。
私は当時、ルート配送のトラックドライバーをしていました。しかし、あのことがあって辞めました。
その日は、初めての配達先に荷物を届けることになりました。そこは市でも有名な繁華街で、もちろん馴染みのあるエリアです。ただ、指示書に書かれたビル名は知らない名前でしたし、その社名も初めて知るものでした。
場所はすぐに分かりました。繁華街の裏通りに立つ、かなり古びたビルに、その指示書にあるビル名が書かれていました。
そこには大きめの段ボールを1つ届けるだけだったので、私はビルの前にトラックを停め、急いで仕事を済ませることにしました。
荷台の扉を開き、指示書にある段ボールを探します。積むときも確認していたはずですが、不思議なことになかなか見つかりませんでした。

奇怪な顧客

回るルートの順番通りに荷物を積んだのに、なぜか目当ての荷物は奥のほうに入っていました。大きな荷物でやけに重かったのを覚えています。傾けると、ゴトッと不穏な音を立てました。伝票には「部品」とだけ書かれていました。
ようやく荷物を見つけた私は、届け先の会社に向かいました。しかし、ビルの外にもビルの入り口にもフロア表示がありません。私は不思議に思いながらも、指示書にあったフロアに向かいました。古いビルなのでエレベーターはなく、階段です。
私はまた、おかしなことに気が付きました。まだ昼間なのに、このビルに人の気配を感じなかったのです。荷物を運ぶ汗だけではなく、得体の知れない冷や汗もあふれ出してきました。
届け先のあるフロアに着きました。届け先は一番奥のようだったのですが、ほかの部屋にはどこも社名を記した表示はなく、もちろん人の気配もなく、すべて空き室のようでした。
一番奥の部屋に着くと、果たして目指す社名が掲げられていたので、私は安堵しました。ノックしてドアを開けると、カウンターがあり、やがて奥から小柄な老婆が現れました。老婆は黙って伝票に印を押して荷物を受け取り、重いはずの荷物を軽々と持ち、そのまま奥に姿を消しました。

奇怪な種明かし

私はお辞儀もそこそこに急いで部屋を出て、駆けるように階段を下りました。トラックの運転席に戻ったときには、汗びっしょりになっていました。
その日、他の配達先をどう回ったか、私は覚えていません。しかし、会社に戻ってから先輩社員にあのビルでのできごとを話しました。
すると先輩は「あのビルは不気味だろう? あのおばあちゃんはあそこの社長の母親で、ふだんは愛想もいいんだよ。でも、ちょっと怖い顔しているんで、新人ドライバーが来るとちょっと不愛想にして怖がらせるのを楽しんでいるんだ」と笑いながら教えてくれました。
そしてその後でこう続けました。「でも、あのフロアのほかの部屋も全部いろいろな会社が借りているはずだよ」と。また、あの会社への荷物は軽い資材のはずだということです。
頭をひねりながら、私は駐車場に戻り、自分が乗っていたトラックを見ました。驚いたことに、ドアの横のガラスに、くっきり手の跡が残っていました。
あの日、私はどこに、何を運んだのでしょうねえ。
とにかくトラックドライバーを辞めた私はその後、タクシー運転手になりました。それでまたまた不可思議な体験をしたんですが、それはまた今度。

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