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その日、僕はバスに乗った

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一体何がしたいのか

僕は職業安定所に行くためにバスに乗っていた。
僕の家は駅からちょっと遠く、職安がある街中に行くにはバスが欠かせなかった。
僕は先月までアダルトビデオのメーカーに勤めていたんだけど、不況のあおりで会社が倒産し、勤め先を探すことになった。技術的なスタッフはもちろん映像関係の仕事を求めて新しい就職先を見つけていったけど、僕は一般事務兼営業職だったので、そういった専門的な分野で探すというのもちょっと違うと思った。
ちなみに、そもそもアダルトビデオの会社に勤めたのは、それが文化的、社会的に意義の高い事業だと思ったから。
とにかく、映像制作に専門的知識があったわけじゃないので、じゃあ僕は一体何がしたいのか、というところから考えた。1人で考えても仕方ないので、職安に行って職員と話しながら「やりたいこと」を見つけようと思った。

あわや大惨事

通勤時間が過ぎ、バスの中には10人ほどのお客さんが乗っていた。ほとんどお年寄りで、他には大学生らしい青年、小さい子どもを連れた母親もいた。その母親が連れていた子どもを見ると、気持ちよさそうにウトウトしていた。
確かに、乗っているのが心地良くなるくらい、バスは穏やかに走っていた。いつもは通勤時間の満車状態のバスに乗っていたから意識したことはなかったが、その日のバスは特に運転が「ていねいで穏やか」に感じた。いつの間に僕も眠くなってきた。
すると突然、運転手が運転席でガクンと倒れた。
僕は思わず運転席に駆け寄った。運転手は白目をむいて気を失っているようで、僕は無我夢中でハンドルを握った。気が付くと目の前には崖が迫っていて、このままだと転落してしまう! 車内に乗客たちの悲鳴がこだました。
僕はハンドルを切り、思い切りブレーキを踏む。しかし、そのブレーキがまずかった。バスは大きく傾き、そのまま横転し、道路を横滑りしていった。その横になったバスの運転席で、車体が道路とこすれて散らす火花の向こうに、僕はこちらに向かってくる大きなトラックを見た。

「ありがとう」

「ぶつかる!」と思った瞬間、僕はバスの自分の席で目を覚ました。
車内を見回すと、子どもは母親の腕の中ですっかり熟睡し、大学生は読書に余念がない。お年寄りたちはおしゃべりしたり、静かに窓からの景色を眺めていたり、平和そのもの。僕は口の端にヨダレが垂れていたので、慌ててそれを拭いた。
やがてバスは職安近くのバス停に到着し、僕はバスを降りた。ていねいな運転でここまで送ってくれた運転手に「ありがとう」と言った。
職安で僕は、バス運転手募集の求人を探した。

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