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その他ドライバー 体験談

最終バスは霊園行き

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押された降車ボタン

私の仕事は路線バスの運転手です。
勤務地はいわゆる地方都市で、路線バスは線路が設置されていない地域まで乗客を運ぶ、特に高齢者には大事な足にもなっています。そういう意味では、地域貢献できている、立派な仕事だと自負しています。
その日、私はその路線の最終を走らせていました。時間は午後10時台で、そこは霊園近くのバス停でした。
バスには最後の乗客が1人だけ、最後部の座席にいました。バックミラーでチラッと見ると、うつらうつらと舟を漕いでるようでした。しかし、その霊園のバス停に近づいたところで「降ります」のボタンが押されたのです。
相変わらず最後部の乗客は舟を漕いでいるように見えたのですが、何せ最後部なので、もしかして起きていて、何かしらの理由があって霊園で降りるのかもしれません。私は霊園のバス停でバスを停めました。

迫りくる老婆

しかし、最後部のお客さんはバスを降りようとはしません。私は念のために車内放送で「〇〇霊園です」と呼びかけましたが、席を立とうとしません。
「おかしいな」とは思いつつ、バスを発車させようとしたとき、バックミラーに、バスを目掛けて急ぎ足で近づいてくる人影を確認しました。暗がりでハッキリとは分かりませんでしたが、それは老婆のようでした。
老婆? 婆さんってのはたいてい老いているもんなんじゃないんでしょうかねえ。若婆なんてのがいるんですかねえ。すみません、細かいことが気になってしまう、私の悪いクセ。
とか考えているうち、老婆はどんどん近づいてきます。屋外で目撃する夜中の老婆って、なんだか不気味に感じてしまいます。
しかし、路線バスは地元高齢者の大切な足。「不気味」だなんて失礼にもほどがあります。
そう自分を戒め、老婆がバスに乗るのをじっと待っていました。定刻から3分くらい遅れてしまいそうでしたが、無情なまねはできません。

残された謎

ところが、その老婆はバスの入り口をそのままスルーし、ずんずん進んでバスの前を歩き始めました。どうやら、ただ単に「歩いていた」だけだったようです。
私は思わずため息を漏らし、今度こそバスを発車させました。バスは、力強く歩を進める老婆を追い越し、霊園沿いの上り坂を登っていきます。最後部の乗客はまだ舟を漕いでいました。
追い越すときに見たのですが、老婆は前方を見据え、少々険しい顔つきでした。時間帯は遅かったですが、高齢者が皆「夜は早く寝る」と思ったら大間違いです。あの老婆は健康のためにウォーキングをしていただけかもしれません。あれでもし、追い越した私のバスを猛スピードで追いかけてきたら、ちょっとした怪談話になったかもしれませんが。
ただ、誰が押したか分からない「降ります」ボタンは気になります。もしかしたら本当に誰かが、あそこでバスを降りたのかもしれませんよね。

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