夜のサービスエリア
20年も前の話。
俺はトラックドライバーとして働いている。20年前もトラックドライバーだった。それは20年前の話なので20歳若かった。
若かったので、長距離の仕事をしていた。高速道路を利用することが多く、サービスエリアの食堂で食事をすることも多かった。それも夜遅い時間の利用が多く、そんな時間には他の会社のトラックドライバーも多く利用したので、いつの間にか他の会社のトラックドライバーとも仲良くなっていた。
その夜も俺はとあるサービスエリアの食堂で、Kという顔なじみのトラックドライバーとメシを食べた。よもやま話で盛り上がり、それからお互いに自分の愛車に戻って仕事を再開した。
旅の道連れ
俺はKのトラックの後ろを行くことになった。トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするが、こんな風に「旅の道連れ」ができるのはなかなか好ましいものだ。
深夜も1時を過ぎると睡魔が襲ってきたりもするが、俺は前を行くKのトラックの灯りに気持ちを集中して睡魔に襲われないように心の中で願った。
ところが、気がつくとKのトラックを見失っていた。
そんなバカな話があるか。ここは脇道もない高速道路だし、俺たちはサービスエリアを出たばかりで、次のサービスエリアはまだ先だ。深夜ということもあって交通量は少なく、周囲に他の車は見えなかった。仮に、Kのトラックに何かトラブルがあったとしても、後ろじゃなくて前を走っていたので後続の俺が気付かないはずがない。
仕事を辞めて
俺は腹の底に鉛が沈んでいくような心持ちになりながらトラックの運転を続けた。やがて高速道路を降りて荷の届け先に到着したが、ついにKのトラックは見つからなかった。
数日後、消えたKのことが重くのしかかっていた俺は、聞いていたKの勤め先に電話してみた。すると驚いたことに、Kはその日の仕事を無事に終えて会社に戻ったものの、その翌日、会社を辞めてしまったらしい。それも、とても沈んだ様子だったとか。
後ろを走っていた俺よりもよほど恐ろしい体験でもしたのか。それともトラックドライバーの仕事を辞めなきゃならない家庭の事情が急に勃発したのか。今となっては知りようもない。