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トラックドライバー 体験談

真夜中の激走

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肌寒い道

あれば2年前の蒸し暑い夜だった。
当時、俺は長距離トラックのドライバーをしていた。長距離トラックのドライバーは、渋滞を避けるために深夜にトラックを走らせることが多い。その夜も俺はA県からN県まで、真夜中にトラックのハンドルを握っていた。
その荷の届け先は初めて行く顧客だったし、その道も初めて通る道だった。
俺はときおり、スマホで現在位置を確認しつつトラックを走らせていた。しかし、長年培った勘とでも言おうか、進行方向を間違えているような気がして、俺は何となくトラックを停め、周囲を確認してみた。
蒸し暑い夜のはずだったのに、外気は冬のように肌寒かった。それに、平地の道を走っていたはずなのに、そこは山道だった。

見たことのない標識

俺は気味が悪くなり、運転席に戻ってトラックを走らせることにした。とにかく走っていれば街に出るだろうから、そこで改めて位置を確認すれば良い。
山道でも交通標識は立っているものだ。俺はまさか異世界に迷い込んだわけでもあるまいと思い、標識に目をやると、今まで見たこともないマーク、文字が書かれた標識だった、ように見えた。あれが看板などだったら、デザイナーがわざと凝ったデザインにして人目を引こうとしたんだと思えたが、大きさや形は確かに交通標識だった。そんなまぎらわしい看板を立てるというのも変な話だ。
またしばらく行くと、前方からヘッドライトの明かりが見えた。近づき、すれ違った車は、これまたそれまで一度も見たことのないような、言ってみれば未来的なデザインの車だった。

帰還

やがて、道はだんだん勾配がなくなり、ようやく平地に戻ったようだった。さらに進むと、家やビルなどの建物も現れ始めた。
俺は何だかホッとして、トラックを停めて運転席から降りてみた。外気にはその季節ならではの暖かさもあった。
スマホで確認してみると、確かに俺は荷の届け先に向かっていた。
そのままトラックを走らせ、荷を下ろした俺は、帰り道も同じ道を行くことにした。あの不思議な場所をもう一度走って、俺の身に何が起こったのかを確かめたかったのだ。
だが、確かに同じ道を戻ったはずなのに、ずっと平地で、あの妙に肌寒い山道を通ることはなかった。
そんなことがあったからというわけではないが、俺は今、近距離の配送ドライバーをやっている。

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