連続攻撃
僕はトラックドライバーなので、食事はなるべくガッツリ系を食べる。中でも好きなのがから揚げだ。
カリッと揚がった表面の衣を噛むと、旨みたっぷりのジューシーな肉が僕の歯と舌に心地良い刺激を与える。肉は硬いわけじゃないが、しっかりと弾力があり、口の中で衣の歯応えと肉の歯応えが入れ代わり立ち代わり、僕を翻弄する。そこに白いご飯を放り込む。口の中に残っていた肉の旨みと衣の甘辛い風味がご飯に乗り移り、さらに僕を翻弄する。
また、から揚げを食べる。ご飯を口にする。この連続攻撃なら、一生受け続けても良い。
トラックドライバーの仕事は体力仕事で、僕はとにかく食事によって体力を維持しようとするので、毎日から揚げを食べた。いや、もはや体力維持などではなく、ただ欲望に身を任せていたのかもしれない。
僕はみるみるうちに太っていった。
至上命令
「から揚げをもう食べるな!」と、妻から至上命令が下ったのは、僕が10キロほど増量したころだっただろうか。
とは言え、何も妻は「ダイエット至上主義」ではない。どう見ても痩せすぎで、病気にも見えるようなテレビタレントを見ては「ヤレヤレ」と、憐みの目を向けたりする。
ただ、トラックドライバーの夫が急に太ったことで健康に弊害をもたらす可能性を見過ごせなかったのだ。
確かに、僕自身もトラックドライバーの仕事は好きなので、できるだけ健康を維持して働き続けたい。しかし、から揚げを愛している。いきなり「止めろ」と言われても、簡単には「うん」と言えない悲しきセレナーデ。
僕は妻に対して「そこをなんとか」、略して「そこなん」攻撃の態勢を取った。要するに「週に1度はから揚げ食べさせて」という懇願だ。妻も折れてくれた。
「か」デー
そんなわけで僕はから揚げと同じ「か」で始まる火曜日を勝手に「から揚げの日」、すなわち「か」デーと定めた。基本的にから揚げは食べないが、毎週火曜日だけはから揚げを食べるのだ。
そんなわけで火曜日はここぞとばかりにから揚げを食べた。食べて食べて食べまくった。
そのせいか、さらに5キロ太った。
ま、いいか。