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トラックドライバー 体験談

運が良ければ

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気持ちの良い連中

昔の映画を見ていたら連隊の隊員たちが「たった1300km歩くだけ、運が良けりゃケンタッキーに着ける」みたいな歌を歌って行進していくシーンがあった。映画そのものも古いモノクロ映画だし、物語の舞台も19世紀初頭だ。
1300kmと言うと、青森駅から広島駅くらいまでの距離だ。それを歩いて行くというのだから、そりゃ目的地にたどり着くのも「運が良けりゃ」と言いたくなるだろう。
しかし、それを悲惨な道行きと考えず、「たった1300km歩くだけ」陽気に歌い飛ばすのだ。
「カリオストロの城」でクラリスの昔なじみのおじいさんがルパンや銭形たちを見て「なんと気持ちの良い連中だろう」とつぶやいたが、その古い映画を見ていて、思わず同じようにつぶやきたくなった。
ちなみに私はトラック運転手の仕事をしている。長距離の仕事なので、一度仕事で家を出ると少なくとも2~3日は家に帰れない。それでも、さすがに片道1000kmもトラックを走らせることはない。
もちろん、仕事で片道1000km走るトラック運転手もいるけど。

たった1300km歩くだけ

それでも私も毎回、数百kmの遠距離に出る。
若いころは、まるで冒険に出掛ける物語の主人公のように感じ、ワクワクしながらトラックを走らせた。それが歳を取り、経験を重ねていくうち、その遠距離が心に重くのしかかるようになった。
「ヤレヤレ、数百kmの道のりか」と。
そんなときにたまたま見たのが「たった1300km歩くだけ」と歌う古い映画だった。「数百kmなんてたいした距離じゃないじゃん。ましてや歩くんじゃなくてトラックで行くんだろ」と、若いころの自分に笑われているような気がした。
それで私も、仕事に出ると運転席で「たった数百km走るだけ」と、心の中で歌うようになった。気持ちが軽くなったような気がした。

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