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タクシー運転手 体験談

迷子の記憶

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多かった引っ越し

僕の父親は建設会社に勤めていて、そのため我が家は引っ越しが多かった。建設作業中、ある街に住んでいても、その仕事が終わり、父が次の建設現場に行くと、その現場に近い街に引っ越すからだ。
おかげで、幼稚園を卒園して引っ越すことになり、全く馴染みのない街の小学校に通うことになった。
小学校からは1人で下校する。同級生たちは、それぞれ同じ幼稚園から進学した者同士で仲良くなり、僕はしばらく友達もいなかった。それで、引っ越したばかりの家に帰らなければならなかったので、途中で道に迷うこともあった。
帰り道が分からなくなると、一度来た道を戻る。つまり、学校まで戻り、再び帰宅に挑戦する。
その日はまだ入学式から3日目で、帰り道をしっかり覚えていなかったこともあって、完全に迷子になってしまった。家にも帰れないし、学校への道も分からなくなってしまったのだ。
多分、住宅街の道の真ん中で半泣きになっていたと思う。そんな僕の目の前にタクシーが停まった。
タクシーの窓から気さくそうな運転手が顔を出し「どうしたの?」と声をかけてくれた。僕は答えられず、号泣寸前だった。運転手は僕の状況を察してくれて「もしかして迷っちゃった? どこの子?」と聞いてくれた。

20数年後

家の住所なんてまだ覚えていなかったので、僕は何とか小学校の名前を告げた。すると、タクシー運転手はタクシーを降り、僕の手を引いて学校まで案内してくれた。角をほんの2つ曲がるだけの近さだった。
そこから記憶を頼りに家への道を歩いてみたら、今度はちゃんと帰宅できた。
さて、それから20年以上経ち、いろいろあって僕はタクシー運転手になった。もちろん、小学1年生のときに迷子になったことは忘れていた
その日、僕はターミナル駅でお客さんを乗せ、住宅街まで運んだ。お客さんをその人の家の前で降ろし、繁華街に向けてタクシーを発進させようとした。
すると、道の真ん中で半泣きになっている男の子を見掛けた。「迷子に違いない」と、直感的にそう思った。

おかしな偶然

僕はタクシーから「どうしたの?」と声を掛けたが、その子は答えられるような様子じゃなかった。それで「迷っちゃった?」と聞くと、かろうじて小学校の名前を言った。何と、それは僕が通っていた小学校だった。気付かなかったが、小学生のころに住んでいた街に来ていたようだ。
タクシーのナビで小学校の場所を確認したら、案外近かったので、そのまま男の子を歩いて学校まで案内した。
学校に着くと、男の子は安心した顔になったし、誰か友達でも見つけたのか、さっと走って行ってしまった。
僕は何か不思議な感覚を覚えながらもタクシーに戻り、繁華街に向かってタクシーを走らせた。
しかし、あの男の子は僕が昔よく着ていたような縦じまのシャツを着ていたし、顔もどことなく僕と似ていたような気がする。おかしな偶然だったのか、それとも…。

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