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トラックドライバー 体験談

2度、帰社したトラック運転手

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会長夫人の回想

私は運送会社で働いています。と言ってもトラック運転手をしているのではなく、事務として勤めています。
その運送会社は、従業員が200人くらいの中小企業です。創業は昭和20年代で、平成に入ったころは従業員は30人くらいになっていたそうです。
これは今の会社の会長夫人、以前は社長夫人だった人に聞いた話です。30年ほど前なので、ちょうど平成になったころのできごとです。
前述した通り、当時従業員は30人ほどで、全員が運転手でした。営業は社長、経理は社長夫人だった奥様が担当していました。運転手が30人ほどだったこともあり、奥様も若く、運転手たちは家族のような存在だったそうです。
事務所が会社の敷地の入り口の横にあり、奥様の席からは、出入りするトラックの運転席までよく見えたそうです。実は今、私が座っているのもちょうどその席なので、奥様の話が手に取るように分かりました。
会社の規模が大きくなるにつれ、新社屋もできましたが、旧社屋は改修などはしたものの、基本的には同じ場所に立っているのです。そして経理などの事務所は旧社屋の同じ部屋にあります。
また、椅子机の配置は何度か変えたりしていますが、今はたまたま30年ほど前と同じになっています。

予定外の来訪

さて、30年ほど前、運転手の中にM君という青年がいたそうです。M君は明るく、誰からも好かれる好青年だったそうです。いつもニコニコしていて、誰に対してもあいさつを欠かしませんでした
仕事から戻ったときも、運転するトラックが会社の敷地に入り、社屋が見えると、誰にというわけでもなく手を振って「ただいま戻りました」と大声であいさつしていたとか。
その日も、奥様は自分の机で事務仕事をしていました。昼を少し過ぎるころ、かすかなエンジン音に気付き、顔を上げると、ちょうど1台のトラックが入ってくるところでした。その時間に帰社予定のトラックはないはずだったので「誰だろう」といぶかしんでいると、それはM君で、いつものように手を振りながら大声を出しました。ただ、あいさつはいつもの「ただいま戻りました」ではなく「お疲れさまでーす!」だったそうです。
「なんでこんな時間に?」と思っていると、そのトラックは忽然と消えてしまったそうです。
奥様はパニックに陥り、同じ光景を他の人も見ていたかもしれないと思って周囲を見渡しのですが、当時の従業員は運転手ばかりで、M君を含めて皆出払っていました。でも、たまたまその日は社長夫妻の子どもが通う幼稚園が休みで、奥様は事務所にその子を連れて来ていたそうです。

2人の目撃者

映画やマンガじゃあるまいし、人や車が突然目の前から消えるわけがない。奥様は心の中でそう自分に言い聞かせて我が子を見たのですが、その子も窓のほうを見て目を丸くしていました。どうやら同じ光景を目撃したようです。
奥様が「今の見た?」と聞くと、子どもは驚いた表情のまま、力強くうなずきました。「今のなんだったんだろうね」と2人でしばらく話していたそうです。
それから1時間ほどして、さっきと同じようなエンジン音が聞こえてきました。見るとM君がにこやかに手を振っています。確かに、予定通りにちょうどM君が戻る時間でした。
M君は大きな声で「お疲れさまでーす!」と叫んだそうです。奥様は思わず、持っていたペンを落としてしまったとか。
その後、しばらくしてM君は会社を辞め、独立しました。奥様と一緒に不思議な光景を目撃した子も、成長して今は別の土地に住んでいます。
奥様はこの話を社長、つまり今の会長にもしたそうですが、信じてはくれませんでした
私は信じられないと思いながらも、ウソや冗談を言ったりしない、またいつも冷静な奥様の人柄を考えると、本当にあった出来事のようにも思えるのです。

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