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トラックドライバー 体験談

トラック運転手を辞めて

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誇り

俺は10年近くトラック運転手として仕事をしてきた。
運転が好きだし、物流を支える立派な仕事だし、人間関係にわずらわされることもないし、それで飯が食えるんだから、ケチのつけどころのない、俺向きの仕事だった。俺にとってトラック運転手の仕事は楽しいし、誇りを持てる仕事でもある。
そんな俺も30代も半ばにさしかかり、人生のパートナーを見つけることができた。
ただ、この嫁さんが、俺がトラック運転手の仕事をしていることを快く思わなかった。
いわく、俺は長距離のトラック運転手なので家を空けることが多く、それに長時間勤務の俺が体を壊さないか心配だし、運転は交通事故のリスクもつきまとうので心配だし、加えて嫁さんの両親は「トラック運転手の仕事は底辺職」と考える古臭い考えをいまだに持っているらしい。
俺は嫁さんを心の底から愛していた。嫁さんの気持ちを尊重したかった。

それで俺はトラック運転手の仕事を辞めた。
幸い貯金があったので、それを元手に雑貨屋を始めた。店はトラック運転手として働いていた会社の近くなので、かつての同僚もちょくちょく顔を見せてくれた。仕事着のエプロン姿を見て「よく似合うぜ」なんてからかわれた。
そんな中、俺がトラック運転手として尊敬してやまなかった先輩が、あるとき、しみじみ俺に語ってくれたことがある。
先輩の昔の同僚に、やはり嫁さんの懇願でトラック運転手を辞め、システムエンジニアになった男がいるという。稼ぎはそこそこあったが、男がそれまで持っていた誇りは死に、嫁さんへの愛も死んだとか。
俺は帰る先輩の背中を見送りながら、俺はこれでいいんだと自分に言い聞かせた。

誇り、再び

そんな俺の耳に、かつて勤めていたトラック会社の倒産の危機が伝わってきた。原因は人手不足らしい。
ある日、その会社の社長が俺の店にやって来た。社長は申し訳なさそうに会社の窮状を話した。はっきりそうとは言わなかったが、どうやら俺にトラック運転手として復職してほしかったみたいだ。
俺は嫁さんと相談し、とにかくしばらくトラック運転手に復帰して、会社が立ち直ったらまた雑貨屋の主人に戻ることに決めた。
こうしてトラック運転手に復帰した俺を待っていたのは、以前よりも増して過酷な仕事だった。だが、俺たち運転手の頑張りで仕事に穴を空けることもなく、また社長が頑張って少ないながら運転手を増やした。
その会社の現状を見て、俺は嫁さんに「そろそろ雑貨屋に戻る」と言った。すると嫁さんは「お店は私に任せて。お母さんも手伝ってくれるって言ってるし。あなたはトラック運転手の仕事を続けて」と言ってくれた。
そんなわけで、俺は今もトラック運転手として誇りを持って仕事をしている。もうじき生まれてくる俺たちの子どもにも、俺は堂々と自分の仕事について話せるだろう。

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