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トラックドライバー 体験談

道に迷ったトラック

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前を走るトラック

これは先輩のベテランのトラックドライバーから聞いた話です。
昭和50年代のことだったそうです。スマホもネットもない時代です。
当時、先輩は北陸方面に荷を運ぶ長距離トラックを担当していました。
北陸から戻るには山の中を通ります。その日、先輩が山道にさしかかったときは、日もとっぷり暮れていました。
ここで先輩は道に迷ってしまったそうです。通い慣れた道だったはずなので、先輩はかなり戸惑いました。
そのまま進んで行くと、もう1本の道と合流しました。見ると、前をトラックが走っています。先輩は、自分同様に北陸から太平洋側に向かうトラックに違いないから、後に続いて行けば何とかなるのではないかと思いました。
道は上り坂になっていて、いよいよ山の中に深く入って行きました。とっくに舗装もなくなり、砂利だらけの細い道だったそうです。

見え隠れするトラック

先輩は少々薄気味悪さを感じていましたが、1人っきりではなく、前を走るトラックがいたので、そのときはとにかくそのトラックを信じて運転を続けました。道は曲がりくねっていたので、時折、前を走るトラックが見えなくなることもあったそうです。
さて、そのトラックの後ろを走り始めて20分くらいしたときです。前のトラックが見えなくなって、そのまま後から走っていて、気がついたら上り坂が終わり、少し広々とした場所に出ました。どうやら道を登り切ったようでした。
そこで先輩は背筋を冷たいものが走ったように感じたそうです。道はそこで行き止まりだったのですが、前を走っていたはずのトラックがいなかったのです。
しばらくぼう然としていた先輩ですが、仕方なく来た道を引き返し、夜が明けてきたところで、見慣れた道に戻れたそうです。
その後も何度も北陸には行きましたが、そのときの上り坂がどこだったかは分からずじまい。
あのとき出会ったトラックが何だったのかも、今も分からないそうです。

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