やればやっただけ
仕事を選ぶ基準は人それぞれだと思う。僕には何よりも、やればやっただけ稼げるかどうかが重要だった。
つまり、安定している公務員、理想に燃える教師、夢を追う歌手などは僕の視界には入ってなかった。医者や弁護士も稼げるんだろうけど「やればやっただけ」とはちょっと違うような気がした。それに、血を見るのは苦手なので医者は無理だと思った。歯医者だって血を見るだろうし。
やればやっただけ稼げる仕事って何だろうと考えて、最初になったのが営業マンだ。だから完全歩合制の会社を選んだ。それもIT関連だ。
「できるだけ稼ぐ」という意気込みで選んだ仕事だけに、頑張って稼いだよ。20代半ばで月収50万を超えることもあった。仕事には朝も夜もなく、ほとんど休日もなかったが、若さもあって「休みがない」ことはそれほど辛いとも思わなかった。
金はたまった。使っている時間もないからどんどんたまった。
このままじゃいけない
30代になり、貯金通帳を眺めながら、僕の人生に足りないものに気付いた。家族だ。やればやっただけ稼げるけど、それだけじゃいけない。けど、当時は女性と知り合う時間もなかった。
そこで転職を決意。貯金はあったので、次の仕事はじっくり考えることにした。かといって、せっかく「必死に稼いだ」ので、あまり減らないうちに次の仕事を見つけようと思った。
それで行き着いたのがトラックドライバーだ。いろいろ調べると、トラックドライバーも「やればやっただけ稼げる」仕事らしかった。
トラック運転の経験はなかったが、普通自動車は営業の仕事でしょっちゅう乗り回していた。運転は好きだった。それでトラックドライバーを目指すことにして、就職先を探しながら大型免許も取得した。入社してから会社のサポートを受けながら取得しても良かったんだけど、せっかちなもんで。
こうしてめでたく運送会社に転職した僕は、今は10tトラックのドライバーとして仕事している。近距離なので、営業マンのときに覚えた道路事情も役立っている。
できてきた将来設計
もちろん仕事で大変だなあと思うこともある。肉体的にも精神的にも。けど、営業マン時代に鍛えられたおかげか、それほど苦にならない。
営業マン時代には、クライアントや上司からの電話にいつも緊張していたが、トラックドライバーをやっていると、携帯電話が鳴るなんてことはめったにない。これは本当に気持ち良い。
仕事は朝早くからだけど、その代わり、夕方にはきっちり終わる。残業はほぼない。友達と会食の約束もできるようになった。
もちろん営業マンほどではないが、それでもしっかり稼げている。最近、一緒に食事した友達の紹介で、気になる女性とも知り合えた。今はまだ頑張って稼ぎ、やがては家庭を持ち、子どももつくり、そうして僕も歳を重ねていったら、今の会社で無理しないでマイペースで稼ぐようにしていこうかな、と思っている。