毎日のこと
僕はルート配送ドライバーの仕事をしている。ルート配送ドライバーは、毎日同じルートを同じ時間に回る。分かりやすく言うと、コンビニに商品を届けたりするのが、代表的なルート配送だ。
毎日同じルートを回るので、いわゆるルーティンワークというやつだ。新しい刺激なんてのは、ほとんどない仕事と言っていい。
そんなわけで、しょっちゅうデジャヴに襲われる。毎日がデジャヴの連続と言ってもいい。
同じコンビニの店員と「暖かくなってきましたね」「そうっすね」なんてやり取りをすると「アレ? これって以前も同じ商品を届けて同じやり取りをしたよなあ」なんて思いにとらわれる。
というか、確実に同じやり取りを繰り返している。もしかしたら、同じ日々を繰り返すループにはまってしまったのではないかと思うほど。
「明日は給料日で、しかも休みだから、久しぶりに豪華に外食でもしようかと思っているんですよ」「へえ、良いっすね」なんて会話を繰り返しているように感じたら、それこそ危ないけど。
記憶の奥?
そんなある日、僕は青信号の交差点を左折しようと、その交差点にトラックを進めていた。
バックミラーを確認すると、左側後方の歩道に自転車がいた。ただ、かなりの距離があったし、僕は「自転車が接近する前に僕のトラックが交差点を曲がり切るだろう」と思って、そのままトラックを進めることにした。
そう思った瞬間、まるで記憶が再生するかのように「意外とスピードを出していた自転車が青信号を直進しようとして、左折した僕のトラックにぶつかる」映像が頭に浮かんだ。
僕はとっさにブレーキをかけ、横断歩道の直前でトラックを停めた。すると、僕の目の前を自転車が猛スピードで走って行った。
ブレーキをかけなかったら、僕のトラックと自転車は確実にぶつかっていただろう。
もちろん、僕には過去にそんな経験はない。経験はないのに、なぜか「自転車がぶつかるかもしれない」という思いにかられた。
危ないところだった。