真夜中の後部座席
タクシードライバーの勤務には隔日勤務というものがあります。
朝から翌日の深夜までほぼ1日近く勤務し、そこから丸1日休むという勤務です。月に12日間くらい、そうして働き、残りの18日間くらいが休みになります。
大都会の場合、深夜は意外とお客様がいます。飲んだ人、残業を頑張った人などです。
大体、朝が来るくらいまで走り続けるタクシーの後部座席で、お客様はエンジン音の中で眠っています。特に酔ったお客様は。
しかし、働き方改革なんて言ってますが、まだ終電がなくなってまで残業している人がいるのは驚きです。
夜はいつでも凍りついています。後部座席で寝入ったお客様は、誰にも聞き取れないくらいの寝言をつぶやいています。
どうしようもなく
一体、何という暮らしなのでしょう。
「こんなはずじゃなかった。何もかも違う」なんて、内心思っているのではないでしょうか。
同じ「深夜まで」働く職業ですが、深夜にタクシーに乗るサラリーマンと違ってタクシードライバーは、翌日は丸1日休みます。
勤務明けにはバーガー・ショップに駆け込み、ポテトをコーラで流し込むのが極上の楽しみです。
それでもまだ何か足りなかったら、次の勤務明けにはLサイズを注文します。誰も「どうして?」なんて聞きません。
残業明けのサラリーマンを乗せると、ついついそんな風に思い、自分だけ自由になれた気がする35歳の夜です。