反感
僕の父はトラックドライバーだ。
父は昭和の古いタイプの父親で「家庭の中で一番偉いのは父親だ」という考えの持ち主だ。僕は父のそんなところには反感しか覚えなかった。親としては海よりも深く感謝しているが、価値観には賛成しかねるので、憧れる存在でもなかった。だから、父と同じトラックドライバーという仕事には絶対に就きたくなかった。
大体、トラックドライバーなんて長時間勤務で低収入で、ろくなもんじゃない。自分の父親を見ていても、決して「カッコいい職業」じゃない。
否定
ただ、まだ幼いころ、父親が勤める運送会社に行ったことがある。かすかな記憶だが、父は黙々とトラックの荷台に荷を積み込む作業をしていた。動きに無駄はなく、荷台の中もたくさんのダンボールがきれいに整然と積み上げられていたっけ。
それに、父と世間話に興じる同僚のトラックドライバーたちは、父同様、決して「カッコいいおじさんたち」ではなかったが、おだやかで真面目そうな「大人の男たち」だった。
大人になり、就職活動を始めた僕の脳裏に、なぜかその日の記憶がよみがえった。
トラックドライバーにはなりたくないけれど、父の価値観を否定しているからって仕事まで否定することはないような気もしてきた。