遅れそう
小学3年生くらいのころ、よくこんな夢を見た。
ハンドルを握って車を運転しているのだが、とにかく時間に遅れそうになって焦っている夢だ。30過ぎた今になっても思い出せるので、それだけ何度も見た。
そんなにしょっちゅう見たわけではないが、小学3年生くらいから2年間くらい、たまにそんな夢を見たのだ。「怖い」まではいかないが、なかなか不安にさせる夢だった。
その後、中学生か高校生のころ、その夢の話を父親にしたことがあった。父親は「夢と言えば、俺は大学を卒業してからも10年くらい、学校の授業に遅刻する夢を見てたよ」と笑って話した。
父親の場合、過去の体験をその後も夢として繰り返していたのだと思う。しかし、運転なんて経験したことのない小学生が、運転の夢を見るのは何だかおかしい気がする。
よみがえる感触
とは言え、幼いころから車好きで、父親の運転する車に乗っては、運転する父親の姿を見て喜んでいたそうだから、それで自分で運転している気持ちになっていたのかもしれないとも思った。
ただ、大人になるころには、小学生時代に見ていたそんな夢のことはすっかり忘れていた。
それで就いた仕事が、トラック運転手だった。夢のことは忘れてたが、車が好きで、車の運転も好きになっていたので、それを仕事にしただけなのだが。
しかし先日、渋滞にはまってしまい、「やばい、このままだと届け先に遅れるかも」と思った瞬間、その夢のことを思い出した。というか、「遅れるかも」と焦る気持ち、その気持ちを抱えてハンドルを握る感触までが「夢の中で経験したこと」として鮮烈によみがえった。
もしかしてあの夢は、未来の感覚を予知したものだったのかもしれないような気がしないでもない。