安全な乗り物
「タクシー 安全」でネット検索すると、海外でのタクシーの安全な乗り方なんかが出てくる。
逆に言うと、日本のタクシーはかなり安全な乗り物だということができる。「日本国内でタクシーに安全に乗る方法」なんて出てこないからね。
考えてみれば、タクシーは見知らぬ人(タクシードライバー)と密室で2人きりになるわけだから、不安と言えば不安だ。しかも、その見知らぬタクシードライバーに命を預けることになる。
しかし、それはタクシードライバーも同じで、見知らぬ他人(乗客)と密室で2人きりになる。命を預かる側だけど。
タクシーの乗客が、こうした気まずい状況に耐えなきゃいけないのは、タクシーに乗車している間だけだから、月に1~2回くらいしかタクシーに乗らない人は、そのほんの短い間だけ耐えればいい。
しかし、タクシードライバーは日に何度もこれをやる。やらなければ稼げない。
緊張感
見知らぬ他人と接しなければいけない職業は他にもたくさんある。ほとんどの接客業がこれだ。
しかし、密室でとなると少なくなる。タクシードライバー以外はマッサージ師とかかな。
タクシーの乗客には、いろいろなタイプの人がいる。中には、タクシードライバーがどうしても話しかけたくなってしまうお客さんもいるかもしれない。
例えば、身なりはいたって普通、というか、むしろフォーマルに近いのに、額にすり傷があって少し血が垂れていたらどうだろう。「お客さん、血が‥」と話しかけたくなるのが人情というものだ。
普通のお客さんなら、ドライバーも「気遣い」から話しかけるかもしれない。しかし、ちょっとコワモテで「話しかけるな」オーラ全開の人だったとしたら。
密室で2人きりになることもありながら、このアンタッチャブルな関係が緊張感をもたらす。そしてこの緊張感を心地良く思えるようになると、タクシードライバーとしての接客術が身についてきたことになるのかもしれない。