親としてできること
この春、大学を卒業した息子が、4月から晴れて社会人となる。
息子が選んだ仕事はトラック運転手だった。正直、最初は驚いた。息子は大学の商学部で物流を学んだようだったが、それでもまさか運転手になるとは思わなかった。
息子がなぜ、トラック運転手になろうと思ったのかは知らない。聞いていない。大学への学費は払ったが、その後の人生は息子のものだ。親だからと口出しするものではない。
ちなみに自分自身は電力会社の技術部門に勤めている。少なくとも、親の背中を見て仕事を選んだのではなさそうだ。
息子から意見を求められればそれには応えるが、こちらからはアドバイスめいたことも言わないつもりだ。何か困ったことがあれば助力は惜しまないが、なければ応援もしない。親としては息子を信頼するだけだ。
親の心子知らず
思えば息子は、子どものころからあまり父親の期待に応える子ではなかった。
男の子らしく野球やサッカーなど、スポーツに熱中してほしかったが、本の虫で文学少年になった。私は技術部門で働いていて、息子にもそういう方面に興味を持ってほしかったが、技術ではなく理論を学びたがった。
しかし、周囲の目ばかりを気にして、自分を周囲に合わせて自分の考えや好みを抑え込んだりせず、1人でいることも平気な、自立した人間に育った。
その上で他人の考えを尊重し、他人に思いやりも示す人間だ。親バカかもしれないが、それは素直にうれしく思う。
トラック運転手は大変な仕事だと思う。だが、大変であればそれだけやりがいも大きいだろうし、何より日本の物流を支えるという意味では、日本経済にとってなくてはならない、かけがえのない仕事でもある。
私が定年でも迎えたら、なぜトラック運転手になったか聞いてみようかな。