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タクシー運転手 体験談

メーターを忘れた日

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工夫と努力

私はタクシー運転手歴8年の中堅、しかも中年ドライバーです。
経営していたIT企業を30代で倒産させ、タクシー運転手になりました。今は一応タクシー会社の社員ですが、タクシー稼業はいわば個人事業主みたいなもの。運転手の工夫と努力、つまり経営手腕で売り上げが変わり、また売り上げ次第で運転手本人の収入が増減します。
とはいえ、もちろん会社経営とは似て非なるもの。私の場合は運転好き、接客好きという土壌があり、そこに経営者経験が加わって、それなりに収入を得ています。
私が働いているのは地方都市で、観光都市でもあります。タクシー運転手になるまでは、それほど地元の観光名所にも関心はなかったのですが、今は観光名所にお客様をお連れすることも多く、次第に詳しくなりました。

観察と提案

地元のご当地グルメも勉強しました。ご当地グルメを食べられるところは市内外にたくさんあるのですが、意外とそれぞれの特色もあります。たとえば「ウナギのおいしい店はどこか知らない?」と聞かれても、お客様によってどんなウナギがお好みなのか、よく観察してご案内します。
特に地元の歴史に興味を持たれ、いろいろ回りたいとおっしゃるお客様にはこちらも力が入ります。何か所もご案内して、気が付いたらメーターを倒すのも忘れていた、なんてこともありました。
そのときは、こちらも楽しくなっちゃってあちこちご案内してご説明して、数時間ご一緒したので、3千円だけいただきました。お客様は恐縮して1万円札を出されましたが、それは固辞しました。

笑顔と感動

歴史好きな若い女性2人連れだった、ってことも大きかったかもしれません。ハハハ(汗)。本当は5~6千円分はお乗せしていたと思います。
私も決して慈善事業でタクシーを運転しているわけではありませんし、あんなことがないように今は気をつけていますが、道中のお客様の楽しそうな笑顔を思い出すと、今も思わず頬がゆるみます。
タクシー業務はビジネスなので、ビジネスライクな接客が基本です。でも、ときにはそれを飛び越えた感動があるものです。それだけのサービスを提供できるのがタクシー運転手です。

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