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トラックドライバー 体験談

宇宙から来たトラックドライバー

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交代の果てに

数年前、俺がトラックドライバーとして勤める会社の社長が交代した。
前の社長は、いかにも昭和な、それも「荒くれ者」が多かったトラックドライバーたちを仕切ってきた、旧態依然な経営者だった。時代が求めていた経営者だったし、従業員たちはそんな社長を慕っていた。
新しく社長を継いだのは先代の息子で、それまではメーカーで生産管理の仕事をしていたらしい。先代が急な病に倒れたので、復帰するまで会社の経営を見ることになって戻ってきたのだが、先代がそのまま亡くなったので跡を継いだ。
従業員たちを統率するために自然と荒くれ者然とした風貌になっていた先代と違い、物腰柔らかく、おとなしそうな青年だった。本人にも葛藤はあったらしいのだが、それでもとした態度でベテラン従業員に接する姿には皆も好感を抱き、会社は新しい一歩を踏み出すことになった。

慣習の打破

新社長が目指したのは効率化の推進だった。
トラック運送の業界は歴史も古く、昔からの慣習が多く残っている。IT化などで効率化が進む世の中の動きに反してこの業界で効率化が進まないのは、この慣習によるところが大きい。新社長はその慣習を打ち破ろうとしたのだ。
新社長に好感を抱いたベテランの中にも反発する者はいた。中でも皆がどよめいたのが、女性ドライバーの採用だった。
業界としては女性ドライバーの積極的採用は推奨されているものの、皆は「やはりトラックドライバーは男の仕事。よそではあるかもしれないが、ウチは別」と思っていたフシがある。
それでも、最初のうちは見た目もたくましくい、「子どものためにもガッツリ稼ぎたい」というシングルマザーが入ってきたりしていたので、何となく皆も受け入れていった。

多様性って

そうこうしているうちに女性ドライバーは増え、今や30人の従業員中、8人が女性だ。我々オッサンから見ると、どうしてもティーンエイジャーにしか見えない、女の子然とした、体の小さな女性ドライバーもいる。
会社はもはや「男だけの世界」ではなく「多様性のある職場」となった。休憩室での会話からも野卑な下ネタは消えた。
中でも年長者のドライバーがその華奢な子に「会社のユニフォームもピンクのほうが良いのかな」なんて、半分からかい口調で言ったことがある。するとその子は「ヤダ、ピンクなんてダサい」と言った。「ピンクはかわいいので女の子が好む」というのも、思い込みに過ぎなかったのだ。
ひと昔前のオッサンたちは若い世代のことを「新人類」と呼び、さらに時代が進むと「宇宙人」と呼ぶようになった。
ウチの会社も新社長はいわば新人類だったが、若い女性ドライバーはやはり宇宙人にも見える。
地球人宇宙人が一緒に働くのも多様性ってやつだろう。

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