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トラックドライバー 体験談

1人ぼっちのトラックドライバー

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古き良き時代

僕はトラックドライバーの仕事をしている。30代だから、会社ではまだ若いほうだ。
トラックドライバーは基本的に1人で仕事をするので、普段は同僚ともあまり話す機会もないが、僕が勤めている会社はアットホームな雰囲気なので、皆仲は良い。
中でも50代のKさんは、僕が入社したときに仕事を教えてくれたベテランの先輩なので、研修の後もずっと仲良くさせてもらっている。若いころからずっとトラック運転手ひと筋でやってきたKさんの昔話は「ホント? ウソ! マジ~」ってことが多くて面白い。
ここんとこソーシャルディスタンスで、なかなかバカ話も盛り上がりにくいが、それでも仕事終わりにKさんを見つけると、つい話し込んでしまい、退社時間が遅くなる。
やはりトラックドライバーは「基本的に1人で仕事」なだけに人恋しいのかもしれない。
そんなKさんに聞いたんだけど、昔は仕事中でも無線でしょっちゅうドライバー仲間と連絡を取り合っていたらしい。無線に替わるものと言えば、今はスマホがあるけど、当然のことながら会社から運転中のスマホ使用は禁止されているからね。禁止されなくても、事故が怖いから運転中は絶対に使わないけど。
スマホと違って、無線は空中を飛んでいる電波を勝手にキャッチして話すから、昭和の昔は警察の無線のやり取りをこっそり聞き、取り締まりを逃れるなんてこともやってたらしい。いわゆる「古き良き時代」だったのかも。
しかし、これはKさんがさらにKさんの先輩から聞いた話らしいけど、本当に思わぬ相手とつながってしまうこともあったらしい。

相手は自分自身

Kさんの先輩、仮にYさんとしておくけど、そのYさんが20代のころのことなので、昭和30年代の話だ。
いつものように仕事中、ドライバー仲間と話そうと思ってYさんは無線のスイッチを入れた。しかし、その日に限ってどういうわけか、誰にもつながらない。
何だろう? 機械の故障かなと思い、あきらめかけたとき、スピーカーからかすかに声が聞こえてきた。その相手と話し始めたが、声からすると、Yさんの知った人ではなかった。
無線で知らない人の声を拾って知り合うのもよくあることなので、あまり気にせず、世間話を始めた。しかし、話をしていると、何だか話がかみ合うような、かみ合わないような変な感じがした。
つまり、勤めている会社は同じようでもあったものの、会社の状況や規模に違いを感じただけじゃなく、プロ野球の話でもチームの活躍がどうもかみ合わない。
相手の年齢は当時のYさんより10歳以上は上に感じたそうだ。それで思い切ってYさんは、相手の名前を聞いてみたら、何とYさんと同姓同名だったそうだ。
だが、相手が名乗ったとたん、無線が切れてしまい、それっきりつながらなかったとか。
Yさんはもしかして未来の、歳を取った自分と無線がつながったのかもしれない。
それでKさんは「10数年経って、若い自分と無線で話したのか?」と聞いたら、Yさんは答えず、ほほ笑んだだけだったそうだ。

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